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ファースト・カウのgcpのネタバレレビュー・内容・結末

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

その時によって、いちばん好きな映画監督って微妙に変わるものだけれど、ここ数年わたしはケリー・ライカートの映画に心うばわれている。ある時から漂流していることの心地よさをもっと意識的に感じていたいと考えるようになったからだとおもう。だからこの最新作は勝手だけど、わたしが求めていたケリー・ライカートらしさはすこし足りないようにかんじた。西部感?がつよすぎて。
それでも相変わらず五感を刺激してくるから大好きだ。湿度やにおいが感じられる映画がすき。それはキノコからそうだし、クッキーが頭をうってしまった時ですら、その感触というか衝撃が妙につたわってくる。ドーナツを揚げた時の生地の広がりや歪なかたちですら、まだ鮮明に思い出すことができる。特にあそこのシーンはすき。きっと身体によくないような油なのに、はちみつかけて、誤魔化しのためとはいえああやってシナモン削るさまなんかみちゃったら、自分も匂いに誘われて行列に並んでは順番まわってくるかなとキョロキョロしている錯覚におちいる。
そしてラストの、寝そべった感触をいままた想像する。窮地に陥っているに違いないのに、柔らかい土が嘘みたいに身体にフィットして、隣には信頼できる友がいるという温かさは安らぎとしかいいようがないのではなかろーか。いつもとは違ってラストは冒頭から示唆されていたものの、あの安らぎの裏で起きたことをあらゆる立場からフラッシュバックのように思い返すと、過去作品のようにやっぱり心がザワザワしたから、やっぱりケリー・ライカートすきーとなりました。いちばんは、ミークス・カットオフだけど!
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