よねっきー

ハウス・オブ・グッチのよねっきーのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
4.1
俳優陣のオーバーな演技合戦はまあ良かったけど、あまりに愛のない脚本と撮影で疲れた。『最後の決闘裁判』でも思ったことなんだけど、リドリー・スコットって実話を第三者の目線から「皮肉な寓話」として撮るようなとこがある。それがおもしろいのもわかるけど、正直言って性格悪いよな。皮肉ってそんな偉いかよ?

人間ドラマが中心の映画なんだろうけど、グッチの服が魅力的に映るシーンは特にないし、劇中で貶し倒されるパオロのデザイン案のヒドさも映されない。これは良くないと思った。つまり劇中の「作品」を説得的に見せてくれないんです。ここが結構痛い。もう少し上手いこと対比を見せてくれたら、パオロのキャラクターとかトム・フォードがグッチを立て直す過程とかがもっと映画の中で輝いて見えたように思う。

あと凡庸な撮影も結構見てて苦しかった。ドラマの撮影って感じで美学があまり感じられない。これそんな2時間半以上も物語だけで持たせられるほど面白いのか?

既成曲をジュークボックス的に流しまくるサントラもそこまでハマってなかった印象。もっとシーンと音楽が完璧にマッチするような興奮を見せてほしい。そういうのはスコセッシとかウェスが上手すぎるだけのような気もするけどね。

ただ良かったのはアル・パチーノ。完璧なまでの狼狽えっぷり。サイキンドウ?と思ってたがめちゃくちゃ元気なようで安心したぜ。彼の演技とアクションじみたセックスシーンを見るためだけでも、映画館に行く価値はあるんじゃないでしょうか。
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