スカポンタンバイク

竜とそばかすの姫のスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.2
なんというか、うん。
全然ダメだね。

この3.2は全て、頑張ったアニメーターと中村佳穂にあげます。
とにかく、細田守監督作品っていう所から言うと、細田守の一貫してモヤっとさせられる女性描写の総決算のような映画だった。
端的には、どんどん聖人化・聖母化していくヒロインという事だ。特に今作は聖母の側面が強い。女性キャラクターが常に「子供を守る」とか「傷ついてもへこたれない、不満を言わない」といった振る舞いで、人間らしい深みがない。本来この話だったら、そばかすの少女が現実で鬱屈していて、Uの世界で自己表現が実現していく対比が必要なはずなのに、そうなっていない。現実が彼女にとってそんなに辛くないのだ。だから、Uでのモチベーションもよく分からない。結果として残るのは、歌が上手い聖母のような人という形骸的なものでしかない。
そして、「母」になってしまう問題は、竜との恋愛にならないという事だ。この映画ってあからさまに「美女と野獣」なわけだが、それは構造と絵作りだけで、ベルと竜のコミュニティ関係は全然進展していかないのだ。これは結局、竜を抱きしめる救世主たる母の役をベルにあてがっているからだ。だから、個人的なコミュニティ進展までいかず、上部だけの関係にしかなっていない。そんな事だから、最後も結局何をしてあげたのかよく分からない。行って帰ってきただけで何が変わったのか。それは結局、キャラクターとその関係を深める事がちゃんとできていないからだと思う。

ストーリーの杜撰さはこれまでも色々あったし、覚悟していたのだけれど、キャラクターまで杜撰だと流石に参った。本当に絵作りと中村佳穂の歌唱力に相当助けられてる映画だと思う。