渡邉ホマレ

ウォンカとチョコレート工場のはじまりの渡邉ホマレのレビュー・感想・評価

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『パディントン』シリーズが大好きなのに公開時に見逃してしまっていたので、U-NEXT配信を機に視聴。

ブッシュ元大統領をモデルにしたというジョニー・デップ版ウォンカが、過剰に怪演し過ぎていてキモチワルかった『マイケルとネバーランド』……じゃなかったティム・バートン版『チャーリーとチョコレート工場(2005)』。

予告編や宣伝ではこれの「前日譚」というアオリがバシバシ流れているけれど、本作はどちらかというとメル・スチュアート版『夢のチョコレート工場(1971)』に近い印象(特にウンパルンパの造形)だ。監督のポール・キングも「姉妹作」と言っていた。

読むたびに「イギリスっぺえ~」と感じるロアルド・ダール原作。中でも子供向け作品の中では群を抜いてブラック・ユーモア爆裂な『チョコレート工場の秘密』。その前日譚…というか、ウォンカの若き日を「想像した」ような本作は、「え…?ウォンカってこの後にあんなひねくれた性格になっちゃうの!?」と疑ってしまうくらい、毒素の抜けた物語に変貌…とはいえ何しろポール・キング監督作なので、『パディントン』シリーズのように「優しく落とし込んだ別世界線の物語」と言った方がよいだろう。

なので、予告や宣伝で強調された「前日譚」の印象で鑑賞しない方がオススメ。

今やすっかりニュースターとなったシャラメ演じる、素直に応援できるパディントン…じゃなかったウォンカ青年が、拝金主義的(というか拝チョコ主義的)な街で成り上がろうと奮闘し、一番大切な事を学んでいく過程は素直に楽しいし、チョコレートがもたらすドラッ…魔法のような演出にもワクワクさせられる。

「コイツ…歌まで歌えんのかよ…!」と思わず白旗なミュージカルシーンも、物語を止めることなく、映像的にも見せ場として演出されていてとても好感が持てる。

中でも素晴らしいのは、映像作品でありながら「言葉」や「文字」(あと「韻」ね!)が、けっこう重要な意味として語られているあたり。オリジナルの物語ではあるのだけれど、文学としてのロアルド・ダール作品に対する敬意を感じたりした。

あと、ヒュー・グラント!この人はホントにエライと思う。最高。