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アレックス STRAIGHT CUTのarchのレビュー・感想・評価

アレックス STRAIGHT CUT(2020年製作の映画)
4.6
このストレートカットはオリジナルが「アレックス」にフォーカスした作品だったのに対し、ヴァンサン演じるマルキュスとアルベール演じるピエールにフォーカスした、「取り返しのない選択をしてしまった彼ら」を描いた作品になっていた。
それはオリジナルが彼女の回想(過去)をラストに持ってきたのに対し、マルキュスとアルベールの乗る救急車で終わるからだ。そして作品としての1番の山場がレイプシーンから最後のアルベールの憤怒に移り変わるからでもある。

そうなったことによってこの映画における"時間"が少し変わって見える。オリジナルならば必ず来る"回避不可能な未来"としての時間であり、本作ではなかったことには出来ない"取り返しのつかない過去"としての時間なのだ。

正直前作の方がより映画の時間芸術的な一面が強く作用しているイメージで、「時は全てを破壊する」の意味がしっかり通っており、個人的には好き。
しかし本作がオリジナルよりも優れているのは「彼らの人生は続いていく」とより強く印象づけられることだ。
オリジナルは全てが終わってしまったという印象が何より破壊的で強烈、何気ない日常や未来が一瞬で跡形もなく崩壊する恐怖が強かった。
しかし順方向のこの作品は彼らの人生がまだ続き、"事後"を乗り越えていかなければならないグロさを描き出すのだ。

映画を逆方向に流す、順方向に流す、それだけでこれだけの印象が変わるのか。この映画だからこそ気づけた映画の面白さ。一見の価値ありです。
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