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たまご割れすぎ問題のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

たまご割れすぎ問題(1926年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

 たまご一つの小さな問題がドタバタに繋がる、まさに針小棒大コメディ。そんでもって卵に対する大げさにデカいマシーンもウケる。劇中、発明家をバワーズ本人が演じているのだが、発明を見せたがる発明家と、この映画を見て欲しい監督の姿はダブる。これは楽しい、なんなら機械と人とのナンセンスさに着目してる点で「モダン・タイムス」よりかなり先を行っている。

 しかし、発端とかプロットは割とシンプル。ここが破綻して滅茶苦茶なわけではない。ただ段々と原因と結果が乖離してきたり、目的のための手段があべこべになるというのがバワーズ作品の可笑しみである。ナンセンスと言って良い。ちなみに監督に名を連ねているテッド・シアーズは後にフライシャー・スタジオ設立に参加後、ディズニー・プロダクションに所属し、「白雪姫」「ピノキオ」などの名作の脚本を担当している。破茶滅茶だが、予想をしっかり立てて裏切るというしっかりした本があって成り立っている。

 ナンセンスそれぞれ。卵が割れやすいことをまず説明するために方々で卵をぶん投げるせいで、出資者が皆んなキレる(原題の「egged on」は「〜をけしかける、恥をかく」などの意味あり)。鶏を口説き落とすとめっちゃ卵産んでくれる。爆薬を食す鶏の卵で大爆発。まさかの爆破オチのオモロさ(サイレントならではの突然の画変わり、音に頼らない)。

 そういやクエイ兄弟がリスペクトしてるみたいだが、彼らの作品に卵のモチーフよく出てくるのはここからきてたのか!卵が孵って車に変身しだす映像は作り物だとしても目を疑い脳に焼きつく鮮烈なイメージだった。ここらあたりの不条理具合もクエイ兄弟が好みそうなものである。コメディを超えてもはやシュールで奇怪で鮮烈。ブニュエルもこういうシュールさとは違うし、とにかく目新しかった。

 劇伴なんだが、今回のバワーズ特集はずっと音がデカかった。サイレントに伏せ合わす程度にしては強調しすぎだし、音が尖りすぎているというか。車の孵化シーンは見てられない、音がギュピギュピ言いすぎてた…。ピアノの軽快なリズムとかで良かった気がする。
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