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ミュンヒハウゼン男爵の幻覚のTnTのレビュー・感想・評価

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 悪夢にうなされて目が覚めるを実際に本日やったので、男爵に理解を寄せる。

 寝台の上に大きくかかげられた鏡に、男爵の荒唐無稽な夢が映し出されていく。しっかりと鏡像とするために鏡の世界にもう1人の演者が同じ演技をするなどしている(後にマルクス兄弟に引き継がれる)。そして、夢が映し出されていくと次第に寝台が撤去され、鏡のフレームが撤去されと没入観が演出されていく。そして目覚めが近づくとそれは逆行していく。男爵が女性の夢と責め立てられる夢を交互にみては一喜一憂するので面白い。あと、慌てふためくのもやめてベッドに顔を埋めるのは、夢だと気づいて「目覚めろ!」と念じる、あるある描写で共感した。

 最後に、鏡に男爵が映し出されるのだが、その鏡はカメラに正対している。もちろんフレーム内に演者がいるだけなのだが、一連を終えてこれを鏡でないと疑う心は無かった。完全に術中にハマったのだった。

ミュンヒハウゼン男爵は「ほら吹き男爵」として有名。自身の作り話を勝手に出版されて憤慨して死亡したとwikiに書いてあった。作品によって憤死する例としては、「世界残酷物語」に出演したイヴ・クラインなんかもそうだなぁと。虚構は人を殺す、このコンプラ時代、映画のそうした暴力性が次第に見直されつつあるのかなと思った。
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