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スプートニクのrollinのレビュー・感想・評価

スプートニク(2020年製作の映画)
4.2
二人宇宙に送ったら増えて戻ってきた!
🪆🪆🪆

『アトラクション/制圧』以降、ロシアンSFは積極的にチェックするようにしている者です。有象無象の自称・映画評論家たちよりよっぽど信頼を置いている小島監督の太鼓判通り、これまで画力に内容が伴わない逆コナン状態だったロシアンSFがついに垢抜けました。ていうかパケ絵が作品の価値を貶める逆パケ詐欺が発生しておるぞよ。

物語の導入はアフター『ライフ』さながら。しかし本作の白眉たる所以は、そこから単なるエイリアンものというジャンルに甘んじることなく、独創的な設定と精度の高い脚本によって、見事に社会主義Ver.エイリアンを描き切ったことにあるんやないかな。あとぐぅの音も出ないくらい映画として正しいマトリョーシカ🪆の使い方。

国威発揚のシンボルとして、何としても生きた英雄の姿をお茶の間に届けたい政府と、英雄に寄生したエイリアン。そこに主人公の絶対助けるウーマン・タチアナが加わることによって、様々な思惑と葛藤が錯綜するサスペンス劇が展開していきます。

'80sソ連の構成主義的モダンな建築物、各ガジェットはそれだけでSF映画のプロダクトとして抜群に機能しているし、洗練されたショットの数々は古の名作SFに通じる神聖な雰囲気すら湛えております。音響効果もすんばらし。
エイリアンに関しては、そのヌメッた表皮の質感やビビりな挙動、温故知新な造形に至るまで流石のクオリティでございます。特に印象的なのはヤツの生態で、エイリアンってどうせ侵略と繁殖が目的なんでしょ?と高を括りがちな我々の虚をつく面白さと可愛らしさがあります。

脱出ゲームとして転調する後半〜クライマックスには大分ご都合主義な部分もあるけど、全体的な完成度の高さにマンマン満足です。予想外のネタばらしも何かうれしい。
分離、分断という言葉は、時代や国によっては自由と同義だったのかもしれない。おれはヌート・ガンレイの顔しか思い浮かばないけどな。'80sソ連を舞台にしたロシア産映画だけど、間違いなく現代世界を眺めて作られた名作。認定。
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