たく

14歳の栞のたくのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
3.7
2021年の公開時に観逃して以来、ずっと観たいリストに入れてて、このたびようやく鑑賞。14歳の中学生たちが日本人らしく周囲の空気を読みつつ、自分のこともちゃんと考えてて、生徒それぞれの個性が何の誇張もなくありのまま刻印されてるという貴重なドキュメンタリーになってた。ただ、作品全体が35人の生徒を全員紹介することに費やされてて、個々の人物を掘り下げる場面がないのが物足りなかった。これは施設で働く障がい者たちの愛すべきキャラを掘り下げた「フジヤマコットントン」という素晴らしいドキュメンタリーを最近観ただけに、余計に違いが際立ってしまった。

春日部の中学校のある2年生クラスの2学期から卒業までを追う時系列の中で、35人の生徒一人一人を紹介しつつ、その時々のイベントが挟まれていく。いちいち自分の中学校時代を思い出して感慨に耽る場面が多々あって、吹奏楽部に所属してた自分としては楽器演奏のあまり上手くない女生徒が演奏会のメンバー審査に通るかどうかという場面がヒヤヒヤした。バレンタインデーとホワイトデーのやり取りは、自分にはあんな羨ましい場面はなかったけどまあキュンキュンしたね。

学校を題材とした作品として触れないわけにはいかないはずのスクールカースト、いじめ、不登校が描かれないなーとは思ったものの、このクラスが先生を含めて運良く素晴らしいクラスだったんだろうね。一人だけ教室に顔を出せない男子が出てきて、その原因となった野球部員が彼を何とか集合写真に参加させようと気にかけてるのがジーンと来た。

Z世代の特徴なのかは知らないけど、登場する生徒たちの自己肯定感があまり高くなくて、将来の夢もやけに現実的なのが印象的。だからといって人生に白けてるわけではなく、彼らなりの照れ隠しもあるように思った。クラスの人気者の女生徒が、天真爛漫なようでいて実は自分を殺して人気を得る処世術を身に付けてるのが驚いたし、それをカメラの前で堂々と語らせるのが、ここまで生徒の本音を引き出したスタッフの苦労を察した。
たく

たく