不老不死をテーマに長い年月を描いた作品。エンタメ作品というよりかは、死について静かに考える映画…という感じ。最初のダンスとかも危うかったが、死とアートを関連付けて見せていて、そのあたりで好みが分かれそうだが、これが絶妙なバランスで保たれていた。寺島しのぶサイドの死をアートとして扱うその見せ方が、一歩間違えれば映画監督のマスターベイションのような作品になっていたところを、不老不死というSFギミックが相反して存在しており、その間に立つ芳根京子が上手い架け橋になっていたと表現するのが合っているか。監督の才能か、そのバランス感が本当にちょうどよかったと思う。不老を選ぶ者、選ばない者、選びたいけど選べない者、選んだけど止めた者、いろんな人生の選択肢が垣間見え、なかなかに考えさせられた。そこに降り立った芳根京子というキャスティングが上手い。彼女だからこそ違和感はなかったのかもしれない。未来がモノクロになる演出はおもしろいが、意図があまり見えなかったのが惜しいところ。大傑作とは言えないが、完成度が高く監督の手腕の見事さが味わえる作品。
