しゅんまつもと

ひらいてのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

ひらいて(2021年製作の映画)
5.0
見てるうちに身体が溶けていてザワザワしてる感情だけが座席に残ってるような、そんな気分になった。凄すぎる。あまりに良すぎる。
2010年代に山戸結希が全国のシネコンのスクリーンに『溺れるナイフ』を映し出したその流れの先にある次の大きな山がここ。間違いない。
今年、他のどんな映画を見てなくたってこの映画を見ない手はない。

校舎の暗闇を照らすのはiPhoneのライトだし、沈黙を破り朝を告げるのもまたiPhoneのアラーム音だし、LINEのなりすましが物語を動かす。しかしその反対に、手紙や自転車といった映画の古典的要素が効果的に配置されてるのも良い。
トマトジュースからの血の赤、ファンタグレープからのあの展開という、色が常に何かを予感させるように点在してることとか、その中心にあるピンクがどこに在るのかにも注目したい。

とはいえ、何より山田杏奈さんと芋生悠さんの完全にキャリアハイの演技よ。もうあの二人じゃなきゃありえない。見方によってはセクシャリティを消費してるだけでは?みたいな物言いも考えられなくはないけど、これはもっともっと根源的な人が人に心を『ひらく』までの話だと思う。
だからこそラストのあの身体の躍動と発される一言に心底胸を震わされる。見事。