ホリ

ひらいてのホリのレビュー・感想・評価

ひらいて(2021年製作の映画)
4.4
ホラー映画だよね。
人間の内に秘めたる(本質に迫る)、
感情の恐さに触れるという意味での、
ホラー映画。

人と人とが対面する
シチュエーションが
シュールおかしくて、
演出次第ではコメディにも
なり得るんだよね、きっと。
だけど、そこに映し出される感情が
全て得体の知れないものだから、
ホラー映画になっている。

得体の知れない
→底知れない好きという感情かな?

好きという感情も、
色々な方面で描かれている気がする。
恋愛として、
友達として、
家族として、
立場の違う、
好きの押し付け合戦みたいに
なっている。

『あんな事あったのに、
よく普通に振る舞えるね』
『お母さんの事が好きだから』
得体の知れない好きという感情を
隠すやり取りもあれば、
『私の物になって』と、
全面的に好きを押し出す、
台詞の使い分けが特徴的。

空間や動作のピックアップも特徴的。
動作的な意味では、
かまぼこ切りながらや、
展示用の桜木を段ボールで作りながら、
糖尿病対策で血糖値を下げる注射を
しながらとか、
その人物を表現する動作の
ピックアップにもなっていて、
人物自身のリアリティーにも
繋がっている気がする。

首藤凛監督の才能は、
天才というワードより、
モンスター級という言葉の方が
似合う気がする。
例えば、
iPhoneのアラーム音に採用しているのが、
警告のサイレン音という部分が
もう絶対に感覚で判断しているというか…

原作にベースが無かったら、
監督自身もアラーム音、
サイレン音にしているやろうな〜って。

別にそこの描写を
随一に推している訳ではないが、
そういう感性が
この作品のクオリティーの高さを
表している気がしました。

展示用の桜木を倒した後の、
男女の互いの表情をピックアップする
正面カットも力強くて、
素晴らしかった。

良い刺激を与えて頂きました!
映画館で観れて、良かった。

初期作の『また一緒に寝ようね』って、
もしかして、この作品がベースに
なっている?


【その他メモ】
・主人公の目や笑顔そのものを指摘する、
台詞使いも特徴的。
『愛ちゃん、恐い。
本当のこと言っている?
全然反省していないでしょう。
目が…』
『告白というか、
全体的に嘘を言っている気がする…』
等の台詞を通して、
主人公が自分のためだけに
動いている(生きている)人間性を
表現している。
自分ではなく、
徐々に他者への向き合いにアプローチ
していく。
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