ぽん

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイドのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ラストに触れていますので未見の方はお読みにならない方がいいと思います。


アンドロイドは理想の伴侶たり得るか?ロボットは人間を幸せに出来るか?という実験のハナシ。

主人公アルマが3週間、一緒に暮らすことになったアンドロイドのトム。ビジュアルが完璧なだけでなく、内面もコミュニケーションを取りながら最適化していくので、NGなリアクションは即座に消去、次からはこんな言い方はしないようにするよ、な~んてサイコーかよwって感じなんですが。主人公のアルマは最初から懐疑的なのですね。アルゴリズムがどーたらって、結局、自分のアウトプットから創り上げるものなんて「自分の延長」でしかないと言い切っちゃうのだ。
いや、この言い分は我が意を得たりと思いましたよ。

思い出していたのは「her/世界でひとつの彼女」(2013)や「ルビー・スパークス」(2012)で、これらの作品で主人公が恋をする相手は、自分の理想どおりに受け答えしてくれるコンピューターや、自分が書いた小説のヒロイン。どっちも主人公のアウトプットから具現化されてるから、そんなん自分の分身でしかない。それと恋愛するって、自分を使って自分の恋情を昇華させてるマスターベーションでしかないやんと、ちょっと気持ち悪かった。

で、本作も、ともすればそういう気持ち悪いハナシになりかねなかったのだけど、さすがはドイツ映画。(?) 絵的にはアンドロイド役のダン・スティーヴンスのなりきり演技も楽しくロマコメ調で物語が進むが、観ながら考えさせられたのは、幸福に生きるとは?という人生哲学なのでした。

アルマは最終的にアンドロイド伴侶を否定する。理屈の上では。簡単に欲望がかなえられ常に肯定される関係性が果たして良いものなのだろうかと。葛藤を耐えてこそ得られる力や、すぐには掴めない幸福を求め続けることが尊いのではないのかと。
報告書ではそう提言するのだけど、実際には彼女は別れを決意して追い出したトムに会いに行くのだ。感情が、身体が、彼を求めている。
いやー、このラストが良かったですねー。頭と心で相反する道の真ん中で逡巡したまま、幸福への道のりを探している。そのプロセスが大事なんじゃないかという。まさにアウフヘーベン。
ぽん

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