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白い牛のバラッドのピポサルのレビュー・感想・評価

白い牛のバラッド(2020年製作の映画)
4.2
結末を見るに、この映画の根源は物語を描くというよりイランの現状をありのまま発信すること、そして死刑制度への問題提起に目を向けてもらい議論をしてもらうことなんだなと思った。真実がわかったうえで得られた生活水準を保つこともできるし、潔白の象徴である真っ白な牛乳でレザをあのようにすることもできたけど、ミナが信念を貫くためにはあの選択をしないといけない。画としては地味だけど訴えかけるものはとても大きくズシンとくるような着地。
静かなトーンが最初から最後まで続くけど、映画的な上手さみたいなものが随所にあった気がする。車は禍々しいものの象徴な気がしていて、道を走る車は日本では考えられないようなスピードでビュンビュン通り過ぎて怖いし、車内を映すカットも後ろから追突されるような気がして落ち着かない。ミナたちが住んでいる国は常に危険と隣り合わせの世界であることを感じた。また、妙な長回しもなんだか不安になるし、ミナが塗る口紅も2回目はなんだか黒々しく見え心情の変化を描写しているように見える。
司法のあり方が違う(イランは宗教に基づいている)ので日本の死刑制度と同列で考えてはいけないんだろうなと思うのとあわせて、映画的なおもしろさもあって見応えがあった。
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