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ボーはおそれているのMrOwlのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.2
アリ・アスター監督の長編3作目です。アリ・アスター監督作品は、2作目の『ミッドサマー』から入りました。1作目の『ヘレディタリー/継承』も鑑賞しました。アリ・アスター監督作品は、超常的な怖さと、人間の精神の脆さ、複雑さ、怖さが入り混じっているところが特徴的ですね。「死」が登場人物に強く影響を与えている、という点も。ヘレディタリーでは主人公のアニー(トニ・コレット)の母が解離性同一性障害を発症していたり、父は統合失調症で餓死、兄が極度な被害妄想が原因で自殺しており、アニー自身も夢遊病です。ミッドサマーではダニー(フローレンス・ピュー)の妹がに双極性障害を患っており両親を道連れに一酸化炭素中毒で無理心中し、自身もそのトラウマに苛まれていました。本作では恐らく「強迫性障害」などに苦しんでいると思われるボー(ホアキン・フェニックス)が、「母の怪死」の連絡を受け、実家に帰ることになります。179分という3時間の長編です。上映時間を確認したときに、ミッドサマーのやや冗長感を思い出し、集中力が持つかな~と少し不安になりましたが、主演がホアキン・フェニックスということと、予告編を見るに割とアクションシーンもあるのかな、ということで鑑賞してきました。結果的には、ボーの物語に没入できたので、長いとは感じませんでした。怪死した母の実家に戻る、というロードムービー的な構成になっており、場面転換や登場人物が変わる点も、飽きずに鑑賞できた点かと思います。ロードムービー的ではありますが、これまでの2作よりも、コメディ要素、逸脱要素(無茶苦茶度)が多く、ニヤニヤしたり、クスっとしたりする場面も多かったですね。それは一重に出演している俳優さん達の演技が素晴らしい、ということもありますね。ホアキン・フェニックスは、もういう事なしです。ホアキンというよりは、もう、本当に、ボーでした。ドゥニ・メノーシェも出てきます。悪なき殺人、理想郷などで演じた人物とは全く異なる「ヤバい奴」として登場します。夫婦役で登場する口髭を生やしたネイサン・レインとエイミー・ライアンも、どこか不気味でしたし、その娘のトニもヤバい奴でした笑。演じたカイリー・ロジャースさん、強烈な存在感を放つ演技で良かったです。パティ・ルポーンも強烈でしたが、何役かは観てのお楽しみですね。観方によっては「ワケが分からん」「意味不明」と感じる人もいれば、「○○の暗喩だ」「○○の闇を示している」と深読みする人もいると思います。もしくはホラー映画好きなアリ・アスター監督が、思い付く限りの「怖いこと」「嫌なこと」を詰め込んだ、と感じる人もいるでしょう。あそこのシーンが怖かったとか、あれの意味分かんない、とかあそこはこういう意味なんじゃないか、とか一緒に鑑賞した人とアレコレ語るのも楽しそうです。配給はこれまでと同じくA24。ある意味、A24らしい映画でしたし、ホラー映画、ヒトコワ、サスペンス、ぶっ飛びが好きな自分には、楽しめた映画でした。自分に合っているというか。不思議な魅力(魔力?)がある映画です。
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