スズキ

ボーはおそれているのスズキのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.3
事前に海外で大コケしてA24の経営に打撃を与えたと聞いていたのでなんの期待もしていなかったからダメージは少ないながらも面白くなかったです。

見ている途中、悪い意味で「何を見せられてるんだろう」か何回もよぎる。

前二作が世界的に当たったせいで周りが何も言えなくなったパターンなのかなと思いました。まあよくある話。

クリエイターの中にも、自由にやらせた方が良い人もいれば、大衆性のある人がコントロールした方が良い人(細田守とか新海誠とか)もいて、アリ・アスターは完全に後者なので、次のチャレンジに期待したい。

冒頭の妄想シーンは悪くないんだよな。
舞台が都市だし、妄想を抱えた人が見る世界ってこんな感じなんだろうな、がとてもリアルに実感できる。

ただ、普通の映画だとさらにそこから非日常的な方向へどんどんエスカレートしないといけないのに、そうなっていかない。
非日常な出来事はたくさん起きてるんだけど、全然想像を超えてこない。『ミッドサマー』は、起きてほしくないことだけが起き続ける気持ちよさがあったけど、そういう快楽も全然見つけられなかった。めちゃくちゃなことが起きるんだけど、その「めちゃくちゃ」に過剰さがないんだよな。前半の都市シーンは、こちらの想像を超える過剰さがあった。

もしかすると妄想の人が見るリアルさを追求した結果なのかもだけど、だとすると映画としては失敗。期待はずれ。

トレイラーで使われてたカラフルな妄想シーンとかも期待してたんだけど、一瞬だったな。

それなのにどうでもいいシーンは長々と見せてくるバランスの悪さ。120分を超えるならよほどのことがないとダメだと思うんだけど、そういう意識はないのかな。
冒頭の都市シーンの後にラストの裁判シーンがあって羊水に帰る、みたいな短編だったら絶賛してたかも。

しかし、また首のない家族が出てくるけど、一体どういうトラウマなんだろう。

音楽もあえてダサいところを狙ったんだろうけど、すべってた。あれのせいで弛緩してた。もっとホラーに振り切った方がこの人の良さが出るのではないかな。コメディにしても振り切りが弱いんだよね。

映画の公式Twitterが、アリアスターの母親もこの作品を見て楽しんだ旨をツイートしてたけど、さすがにここまで家庭不全ばっかり描いてる監督だと、その家庭環境に同情したくなるんだけど、本心を知りたくはある。
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