このレビューはネタバレを含みます
自分は正直あんまり笑えない映画でした。「遠くから見れば喜劇でも近くで見れば悲劇だ」というチャップリンの言葉がありますが、過剰な安心安全を求める日本社会にすっかり慣れてしまっているせいなのか(最悪だ)ボーの馬鹿げた心配も分からんでもないな、と思ってしまうところもありました。
リラックスする場所であるはずのお風呂場すら気の休まる空間ではなくなってしまったボーの極限状態はさすがに笑ってしまいましたが…。
まああれこれ思いながらも前半は異常な旅を面白く観たんですが、後半になると段々と悲惨さが際立ってしまって、観終わった後はなんとも言えないやり切れなさだけが残りました。
『ヘレディタリー』や『ミッドサマー』は最悪な状況にも関わらず映画的にはアガってしまうような倒錯した面白さに感動を覚えたので、今回もそういうものを期待していただけにガッカリしてしまったというところです。
奇想天外で考察のしがいがあるような映画だと肩に力が入っていたのも失敗で、解釈の余地はあるにしても物語自体はそこそこ単純で、ラストに関しても『トゥルーマン・ショー』を想起させるような既視感があり、3時間という長さの割には物足りなさを感じてしまいました。
アリ・アスターの次回作はまたホアキンと組んでウエスタン・ノワールのようで、これは楽しみです。