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アミューズメント・パークのpのネタバレレビュー・内容・結末

アミューズメント・パーク(1973年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

数ヶ月前に鑑賞。

ホラー映画ということではあるが、
そこまでホラー要素は感じられず、サイコスリラー的雰囲気と監督独特のフィルム感、70年代感があるカットの切れ味等そういった要素の方が印象として残っています。

映画の始まりに、主人公を演じた役者がこの映画で伝えたいこと、
終わりには、映画を通して見た人に向けてのメッセージがあり、
世にも奇妙な物語のタモリが短編の主演までやってしまっているという構図です。
これは映画としてはあまり見受けられないので、メッセージ性を重視するあまり説明とエンドカットを後付けしたのか、
元々短編ビデオ作品の1部や
誰か個人的な人に向けてのものだったのでしょうか。

内容は、皮肉でニヒルなものとして仕上がっています。
生き生きとした老人は白い部屋で
ズタボロの老人に"外に行かないの?"
と問いかけるも、"外には何も無い"と無気力に返されます。
それでもドアノブを捻り、前へ進むと
大きな活気に溢れる遊園地。

アトラクションを探す中で、夫人にぶつかり真っ白なスーツが汚れてしまいます。夫人に叱責され、謝罪します。

アトラクションには注意書きに所得制限が表記されていて、一定の基準に満たない低所得の人間は健康であっても乗ることが出来ないジェットコースターであり、困惑しながらも楽しむ老人。
その後、ゴーカートの様な物に乗り
その為の免許も取得します。
そこで勃発した老夫婦と若者との車両事故に、老人は現場の状況を証言します。
証言をその場で記録する警察に免許証の提示を促され手渡すも、眼鏡の着用義務を満たしておらず、若者に"裁判が楽しみだ"と言われ、悲哀な表情でその場を後にします。

途中、若いカップルが占いの館に入り、
老人もそれに付いていきます。
占い師はカップルに"未来を見せるが、必ずこの先も一緒に居ること"を条件として提示され、同意した上で未来を見ますが、それは住宅ローンの負債を抱えた家主がインタビュアーに改修工事を怠っている点を指摘されている映像。
その家にすむ老夫婦は、夫が寝たきり。
妻は少ない貯金を診察代にあてるも、医者は希望通りに動いてくれず、公衆電話で何度も訴えを起こしています。
若者は絶望的な表情で館を飛び出し、
先にその状況に怯え外に出ていた老人に八つ当たりします。

老人は怪我を負いながら、
1人の少女に辿りつき絵本を読んで欲しいと頼まれます。
喜んでその頼みを聞き受けますが、
母親に帰りを急かされた少女は、読み聞かせの途中にも関わらず支度を済ませ帰っていきます。
母親に絵本を奪われた老人は、号泣し
行かないでくれと懇願するも周りには誰もいませんでした。
フラフラになりながら1つの部屋に戻り、ボロボロの体を休ませた途端、
自分そっくりの老人に"外に行かないの?"と問われます。

ざっくりとした上記の流れ以外にも様々な悪行に晒される主人公ですが、
自分は老人というのはある程度の年齢と経験を重ねた人間のメタファーであり、
遊園地は社会の比喩だと感じました。
まだ見ぬ世界へウキウキしながら飛び出すも、自分の理想にしていた世界ではなく叱責を受けることもしばしば。
好奇心に駆られ行動するも、果てには理不尽に痛手を負い、最後は殆どを失い1人になる。
社会に出て間もない人間が、
自分の心の中に存在する理想郷と
実際に自分が存在する社会そのものとを無意識に比較しながら生き続けている結果、絶望と相対するのは少なくないと思います。

そういった部分に於いての風刺的メッセージ性を強く感じました。
最後のシーンで老人を演じた役者が、
"若い内から沢山行動する事を躊躇うな"といったメッセージを投げかけたのも、映画を通してある一定の説得力を感じます。

老人を演じた俳優さんの演技は見事でした。
特に後半部分で手当用のガーゼを貰うシーンの前後と、ラストの読み聞かせの時間が頓挫した絶望に泣くシーンは非常に良かったと思います。
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