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アミューズメント・パークのkuuのレビュー・感想・評価

アミューズメント・パーク(1973年製作の映画)
4.0
『アミューズメントパーク』
原題 The Amusement Park  映倫区分 G
製作年 1973年。上映時間 53分。
劇場公開日 2021年10月15日。
『ゾンビ』のジョージ・A・ロメロ監督が1973年に手がけたものの、半世紀近くも幻の未発表作品となっていた長編映画。
ある老人が遊園地で一日を過ごそうとするが、いつしか悪夢のような状況に追い込まれていく様が描かれる。
年齢差別や高齢者虐待についての世間の認識を高めるためにルーテル教会がロメロに依頼して製作された作品だったが、老人の悲惨な状況が容赦なく描かれており、当時のアメリカ社会をストレートに描いた内容から依頼主がおののき、そのまま封印されて長らく未発表となっていた幻の一作。
老人役をロメロ監督の『マーティン 呪われた吸血少年』にも出演したリンカーン・マーゼルが演じた。
余談ながら、リンカーン・マーゼルは人生の終わりに近づいた人物を演じたにもかかわらず、36年後の2009年106歳まで長寿を全うしたらしい。
2018年に発見されて4Kレストアが施され、2021年10月に日本でも劇場公開。

遊園地に訪れた老人。
人々に喜びや楽しみをもたらすはずの空間で、彼は次々と人々の悪意にさらされ、心身ともにボロボロにされていく。

偉大なるジョージ・A・ロメロの親族が、彼が1973年に監督した映画(短編)を発見し、修復した今作品。
多くの熱狂的なホラーマニアにとって、今作品は必見のジャンルの出来事のひとつとなったにちがいない。
個人的にゾンビ系の作品は必ず見るように勤めてるが、ジョージ・A・ロメロの熱狂的ファンではないし、視聴は大分遅れました。
まじめな話、これがどうしてお蔵入りし続けたのか?
斬新な映画のポスターと、ロメロが監督として最も天才的な時期に、この小さな短編プロジェクトを指揮したという知識から、これは間違いなく勝者になるはず。
今作品は、実際の映画として作られたのではなく、若い世代に、我々が高齢者を粗末に扱っていることを明らかにし、高齢者にもう少し敬意と尊厳を持って接するよう呼びかけるための教育・啓発ビデオメッセージのようなものだったようです。
云うなれば、公共サービス広告の延長のようなもの。
もちろん、生まれながらの反逆者であり、反保守主義者であるジョージ・A・ロメロの手にかかりゃ、このコンセプトはたちまち、製作陣が世に放つ勇気さえなかった、重苦しく、ショッキングで、真っ黒な社会風刺となった。
啓発用ビデオにロメロを起用するとは、何とも奇抜なアイデアで、ロブ・ゾンビに紙おむつのCM監督を依頼したり、マイケル・ムーアに共和党の大統領選挙プロモーションビデオの撮影を依頼するようなモンかな。
しかし、悲しくも事実であり社会的テーマでもあるこのテーマに対するロメロの解釈は、素晴らしいの一言に尽きる。
主役のリンカーン・マゼールがこのテーマについて詳しく語る長いスピーチで始まり、終わるこの映画は、全体的に力強く、インパクトがあり、そして非常に憂鬱。
派手な服装で楽しい気分の年配の主人公は、混雑した遊園地で楽しい一日を過ごしたいと願っている。
しかし、彼はすぐに、彼や同年代の人々が、いわゆる活発で生産的な社会の人たちから、常に金をむしり取られ、見下され、恥をかかされ、無視され、罵倒され、肉体的に傷つけられることさえ経験する。
様々な比喩的なシークエンスは、バンパーカートが認識できる交通状況に変わる様子や、高齢者が(孫の)子供たちと過ごす時間をしばしば否定される様子など、信じられないほど突きつけられ、悲痛な気持ちにさせられる。
正直なとこ、45年間もお蔵入りになっていたことは問題ですらない。
平均寿命は大幅に伸びたが、孤独やデジタル・アナログといった問題が新たな課題となっている。ある意味、今作品は実存的な意味でロメロの最も恐ろしい映画かもしれない。
観た後は気持ちが揺さぶられる作品でした。
kuu

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