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彼女が好きなものはのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

彼女が好きなものは(2021年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

前半は観ながらずっとイライラしていたのだが、最後まで観て、結構いい映画だったと思った。

原作のタイトルは「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」、ドラマ化したときは「腐女子、うっかりゲイに告る。」だったそうだから、今作のタイトルのセンスは素晴らしいと思う。

ゲイである安藤純(神尾楓珠)に、BL好きの三浦(山田杏奈)が告白して付き合う、という話。前半はとにかくこの三浦の身勝手さに苛ついた。純が優しくてBL好きを否定しなかったというだけで、延々と人前でBLの話を聞かせたりBLグッズのイベントに連れて行ったりする。別に趣味は自由だが、興味がない相手をそれに付き合わせ続けるのはいかがなものか。逆に男子がファミレスで延々と女子相手にAVの魅力を語っていたとしたら絶対大ひんしゅくの癖に。しかも告白のときやショックを受けたときなど、必ず周囲を巻き込もうとする。周りに「ヨシヨシ」してもらうことで甘やかされて生きている"ザ・女"の感じが本当に無理だった。自分から純の家に押しかけてヤりにくるグイグイ感もドン引きだったなぁ。全体的にこの女、すごく下品で図々しい。

純の恋人である誠(今井翼)も最低。妻子がある身ながら高校生の純に手を出すクズ。自分は家族と、純は彼女と来ているテーマパークで、堂々と純にキスをする。いい年した大人のやることかね。理性ゼロかよ。危うく純は自殺するところだったぞ。

友人の亮平(前田旺志郎)はいい奴すぎる。彼のお陰で、後半、純が少し前を向いて歩けるようになるまでの展開は静かに胸を打つものがあった。クソみたいな人間ばかり出てくるこの映画で、亮平の素晴らしさは圧倒的な輝きを放っている。この亮平の良さを前にして純にメロメロな三浦を見ると、女は所詮顔しか見ていないのだなと残念な気持ちになる。純に対し常に真っ直ぐに接し続ける亮平は、常に相手を気遣い、自分の損得を後回しに行動ができる。純に反発する小野(三浦獠太)に対してもしっかりと言うべきことは言い、ちゃんと必要十分なフォローもする。明るい空気を絶やさない亮平が、この映画唯一の清涼剤。

ちなみに後半も三浦はクソ。病室の純に引くほどの量のBL本を持ってきたり、学年集会の壇上で自分に酔って自分語りの大演説をして号泣したり、「安藤くんみたいな人が生まれたのは神様が腐女子だったからじゃない?」とか言ってみたり。マジで嫌いだわこいつ。

せっかく自分を理解してくれる友人たちに恵まれたのに、結局大阪に引っ越すような終わり方は残念だった。まぁ現実的にはそうなのかもしれないが、そこは"まだどうなるかわからない"のままにしておけば良かったのに。

磯村勇斗の贅沢な使い方には驚いた。
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