きゅう

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のきゅうのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

しっかり鬼太郎だった、水木イズムがあったと思う

ミステリーっぽい感じではあるが、正直ストーリーはあらすじ聞いただけである程度予想つくようなものではある。

序盤の列車シーン、タバコを吸っている大人たちに紛れてずっと咳をし続ける子ども。
時代を上手く現してて良いし、この後展開される物語のメッセージを暗示している。

搾取され続ける弱者、そんな社会構造の中で成り上がろうとする水木。
彼が最後、つまらねえ、と吐き捨てるシーンは見事。

戦争というものを、人が死ぬからダメ、というだけの単純な描き方をしていない。
自身のことしか考えない上官。戦中・戦後のゴタゴタの中、搾取されてしまった母。
戦争が故に起きたものではあるのだが、戦争につながりかねない構造でもある、と描いていたのは誠実だと思う。
時代描写なども含め、同時期に公開している某戦中・戦後映画よりよほど誠実。

今回のゲゲ郎もそうだけど、鬼太郎は正義のヒーローではないんだよね。
誰かの味方とかではないし、思想はない。
だって妖怪だから。
最後、少年の魂を見届けるシーン。彼らだけは見ていてくれる。
戦争含め、戦後の近代化社会で発展していく日本が、あえて無かったことにしようとしてきた負の遺産達に目を向け、鎮める。

アニメ鬼太郎らしい派手な戦闘シーンもあり、“いつもの鬼太郎”を求める子どもも楽しめそう。
個人的には陰陽師との戦闘が好き。
線がぐにゃぐにゃしていて湯浅アニメみたいな感じもあってよかった。

エンドロール、墓場鬼太郎へと繋がっていく流れがめちゃくちゃいい。

今もそんなに変わってない。
目玉おやじのこのセリフで泣きそうになった。
これをしっかり言わせたのは素晴らしい。
きゅう

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