このレビューはネタバレを含みます
※伝記映画なのでネタバレとかないと思うけど、一応ネタバレ設定にしてます
個人的にノーラン作品で一番よかった。
まだ潔癖感はあるものの、結構泥臭い印象。
同情的とは感じず、画面に映る“人間”は愚かで恐ろしい。
オッペンハイマー本人や原爆を正当化、賛美するような内容ではない。
とても不安定で、掴みどころがなく、傲慢。
そんな人物。
トリニティ実験の流れは本当にキツい。
特にカウントダウンは恐ろしくて緊張しながら見ていた。
あの出来事の結末を、今の世界を知っているからこそ、邁進する人々に絶望。（映画としては面白い部分ですけどね、お仕事映画的で）
ここら辺が結構疲れた。
原爆投下が成功して喜んでいる人々と、原爆被害の想像がリンクするシーン。
個人的にはあの見せ方自体が非常にグロテスクだと感じた。
火傷を負った女性、真っ黒な遺体とか、もう少し生々しくやっても良かったんじゃないかと思うけど。
あの歓喜と悲惨さを交互に見せ、リンクさせていく演出に、ビジュアル面ではないグロテスクさを感じた。
あとは音や音楽が素晴らしい作品でしたね。
あの責め立てられるようなドンドンという音、心情に沿った音楽も良い。
彼（ら）はこの世の理を変えてしまった。
広島・長崎への投下から軍拡競争の激化、科学技術の進歩によって、あの頃の兵器を遥かに凌駕する兵器が今後も開発されるはず。
あの時代を知らない、大戦を経験していない私たちが、同じ過ちを繰り返さないように。
ラストシーンがすべて。
彼が開いてしまった扉の先で、私たちは今生きている。
余談
フォン・ノイマンがいないのはちょっと気になった。
なかなか強烈な人なので、出したらオッペンハイマーが霞んでしまう、まだ良い人に見えてしまう可能性はあるので出してないのかな。
