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仕掛人・藤枝梅安のシネラーのレビュー・感想・評価

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)
4.0
「鬼平犯科帳」や「剣客商売」等で
知られる池波正太郎氏の生誕100周年
を記念しての本作を劇場鑑賞。
しかしながら、
原作も過去の映像作品も全く知らず、
豪華俳優陣の古風な時代劇が観れる
という期待で劇場へ赴いた次第だったが、
今の時代に感じる事が少なくなった
渋い時代劇を感じられて良かった。

鍼医者としての表の顔を持つ一方で、
裏では依頼された標的を暗殺する
仕掛人の顔を持つ藤枝梅安が、
料亭の女将を標的とした依頼から
巡っていく運命的な物語が展開されるが、
単純な勧善懲悪だけではない顛末が
とても人情味を帯びていて良かった。
一貫して渋い立ち回りをする
豊川悦司の演じる梅安が格好良く、
それでいて同じく仕掛人である
片岡愛之助の演じる彦次郎との
相棒かのような交流も魅力的だった。
標的となる女将も男に虐げられた
生い立ちから成り上がった悪女であり、
天海祐希の演技と相まって
憐れみを感じさせる人物で良かった。
物語としても、
舞い込んできた別の依頼同士が
繋がっていく展開が面白かった。
そして、
仕掛人達の暗殺場面は決して爽快さや
華やかさがある描かれ方ではないが、
それが逆に現実味を感じさせている
と思う部分だった。
更に劇中における殺陣の場面に関しても
決して古風な一辺倒ではなく、
現代的に素早く描かれる部分もあって
大いに楽しむ事ができた。
又、劇中に登場する食事が
どことなく美味しそうに感じられ、
一般的には質素な物であっても
食欲をそそられる食事風景だった。

気になった点としては、
物語が身近なところで繋がり過ぎて
全体的に物語の規模が
小さく思えてしまうところだった。
それに伴うかのように、
時代劇としては劇中の舞台となる場所が
少ない印象を受けた。
又、一度観た回想の場面を
大一番の見所で再び挿入されるのは、
露骨な感動場面に感じられて
好きじゃなかった。

昔ながらの時代劇を現代的にも
楽しめるように落とし込みつつ、
しっかりと昔からの良い部分の芯を
貫いている作品だと思った。
2部作として製作され、
しっかり本作だけでも完結して
楽しめる内容ではあったが、
是非とも4月公開の2作目も劇場で
鑑賞したいと思う。
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