『この素晴らしい師弟愛に祝福を！』
本作を観るためにテレビシリーズ4クール分とOVA、『蒼のカーテンコール』プロジェクトのARIA The AVVENIREとARIA The CREPUSCOLOを予習した。流石に量が多くて大変だったけどARIAシリーズという素晴らしいアニメ作品を知る良いきっかけになったし、おそらくシリーズ完結作である今作を劇場で観るチャンスを逃さずに済んだのは良かった。
とは言えこの手のシリーズ完結編は、シリーズを追ってきた年月が長ければ長いほど完結を見届ける時の感慨はひとしおと言うもの。最近になってシリーズを一気見した自分と長年シリーズのファンだった人では大きなディスアドバンテージがあるのは事実。結論から言うと、The CREPUSCOLO程ではないけど十分満足することができた映画だった。
今回はネオ・ヴェネツィアのウンディーネの会社の一つ『姫屋』がお話のメインになる。TVシリーズ3期で断片的にしか描かれていなかった藍華のプリマ(一人前のウンディーネの事)昇格試験の回想、プリマになった藍華とちょっと距離ができている晃さん、シングル(半人前ウンディーネ)のあずさの姫屋に伝わるある物を巡るストーリーなどが描かれる。
本作で一番素晴らしかったのは勿論藍華と晃さんの師弟愛描写。厳しいけど実は繊細な所もある晃さん、時に晃さんに反発したり、別会社の灯里の先輩である優しいアリシアさんに憧れていたりしつつも、真の部分では晃さんを尊敬している藍華。そんな2人が過去と現在を通してお互いの絆やウンディーネとしての覚悟を深めたりする姿はシンプルに感動的だった。
ちょっと気になったのはThe CREPUSCOLOと比べるとある場所に主要メンバーが集まって思い出話をしているシーンが全体的に多く、映画全体でキャラクターの物理的な動きがあんまりなかったことかな。
それに今回の姫屋のストーリーがARIAシリーズの完結編になるというのはちょっと寂しい感じがある。ARIAシリーズの事実上の主人公は灯里の筈だし(複数主人公かもしれないけど)、時々姫屋とオレンジぷられねっとの話はあるものの、だいたいのストーリーは灯里とアリシアさんが働くARIAカンパニーが中心になっている。『The AVVENIRE』はタイトル通りTVシリーズの少し先の未来でのウンディーネ3会社にそれぞれ入った新米のアイ、アーニャ、あずさの本格参戦といった感じで、『蒼のカーテンコール』の導入といった立ち位置になってある。その後の二作でオレンジぷらねっと、姫屋の話でシリーズ完結になったが、やっぱり締めのエピソードはARIAカンパニーメインが良かったなぁという気持ちがでてくる。欲張りだけど、もう一作作って全4部作で完結の方がスッキリしたような気がする。
世界観が未来SFとはいえこの手の日常モノ作品はいくらでも続きが作れそうだし、The AVVENIREからのシングル3人の成長とかももっと観てみたかった。長年ARIAシリーズを追いかけてきたファンの方々はこれで最後でいいのか、良くないのか、ちょっと気になったりする。
