映画館で見る、無音シーンって鳥肌が立つものが多い印象。
演出の要素は違うけど、
「ドライブ・マイ・カー」の終盤の演劇内における手話シーンも
ほぼ無音で、映画館にいる観客が一つのスクリーンを
全神経を注いで見ている感じがたまらなく好きです。
この作品では、耳に障害がある家族らが、
娘の合唱を見ている途中で
視点映像に切り替わるのだが、
その際に“無音”を用いた演出が施される。
それまでにシーンの盛り上がりとして、
充分にボルテージが上がった中で、
いきなる無音の空間に切り替わるので、
家族内でも互いの生きている世界観の感触が
この一つのシーンに集約されているのが良かった。
手話を使い、音が聞こえない世界観と、
音楽による音で彩られた世界観の
2つの組み合わせを前提として、
違和感なく、
観客に提示できた事がこの作品の強み。
生きている世界観が対照的なので、
娘とそれ以外の家族の感情のすれ違いも
自然と描きやすくなり、
多くの人が楽しめるエンターテインメント作品に
仕上がっている。