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コーダ あいのうたのKHのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
年間ノルマ60本中72作品目。
『CODA あいのうた』観させて貰いました。

アマゾンプライムで比較的評価が高いのでマイリストに入れていて時間があったのでサラサラっと視聴しようという流れでした。

予備情報も全くなく、漠然と家族愛や少女の独り立ち系の作品かなーと軽い気持ちでいました。
またCODAコーダとは

Children of Deaf Adultの頭文字を取ったものであり、ざっくりいうと耳が聞こえない両親に育てられた、耳が聞こえる子供。を指します。
この作品がダサい『あいのうた』というサブタイトルが付けられているので、
そこまで期待してなかったのですが、
確かにコーダと言い切られてしまうと全く何の作品かはわからないと思うので、こちらで補足させていただきました。


まずはネタバレなしで率直な感想をば述べたいと思います。

『おそらくは今期見た中ではぶっちぎりの一位だと思います。僕は映画作品の評価にあえて5.0を絶対に付けないようにしています。その上で、今作は僕の中でも最高評価です。
はっきり言って信じられないくらい泣いてしまいました。全く無警戒だった作品に度肝抜かれてしまいました。そんでもってびっくりして色々と調べると、うん。そら数多くの賞を取ってるよね。と知らなかった自分が恥ずかしいくらい有名であり、名作だとわかる。
自分がいかに映画にアンテナを張ってないかを恥じました。とりあえず僕の中で最高評価は妥当です。確実に人にお勧めできる一本と言えます。一人で見た直後、すぐに妻に教えて、夜にもう一度見ましたが、初見のむしろ倍泣いてしまいました。それほどまでによかったです。』


ここまで一つの作品をベタ褒めするのは久しぶりというか、アベンジャーズのエンドゲーム以来かもです。
久々に最高評価に出会えて未だに興奮が冷めやらないです。

またここからはネタバレを含みますので、まだ見てない方はここらで戻ってください。

そもそもこれも後になってから知ったのですが、この作品は
2014年のフランス映画『エール!』の英語リメイクであり、アメリカ、フランス、カナダの共同製作であり、
Appleは映画祭史上最高額となる2500万ドルでこの映画の配給権を獲得しているなど、
原作を大きく超えて旋風を巻き起こしていると知りました。

また僕はまだエールを観てないので、こちらも併用して見ようかなとも思ってますが、こちらがあまりにも良いので、比較対象として粗探しになってしまいそうなので、忘れた頃に見ようと思います。

まずこの作品が安っぽい御涙頂戴プロットになっていないところがとても気に入りました。
耳の聞こえない両親に育てられた耳の聞こえる子が、歌を歌う。と言う設定だけでも
涙を誘いそうであり、逆に言えば日本がもしこの作品をリメイクしようものなら、
おそらくは最低なものに仕上がるに違いないと思ってます。

何故か?それはこの作品を御涙頂戴にしてしまいかねないからです。

しかしながら今作では、残酷にもかなりベビーな台詞が多く登場します。
冒頭から少女が歌いながら漁をしているシーンで、その絵力が強くすぐにこの作品に没入してしまいますが、
何故こんな女の子が父親と兄と一緒に漁に出ているのか?という引き込みが凄かったです。当然船の上の無線が聞こえないからであり、また、取った魚を競りにかける際もルビーの存在が大きいからだと観ていると後から想像できるようになっていきます。

また、母親からはルビーが生まれてきた際、どうか耳が聞こえませんようにと願ったと告げられたり、
兄からも、お前が生まれるまでは家族は平和だったと告げられたり、

文章だけ取るとそれは無論家族の愛があってこその台詞なので、一見かなりひどいセリフに聞こえますが、それは紛れもない事実だとわかるようになってます。

また、ルビー自身確かにとても歌が上手いですが、奇跡の逸材と言われるほどではなく、
V先生に初見で歌を聞かせた際などは、
全然声が出てないと非難されたり、発声がなってないと犬の真似をさせられたりとしたところもリアルでよかったと思います。

また、マイルズとの恋路も、作中ではあくまでも癒しの要素にしかなっておらず、彼がいたからこそ合唱クラブにこそ入りましたが、

彼の存在で自身の精神状態が180°変わるようなこともなく、存在し続けたのはよかった点と思います。

また手話での会話がここまで見ていて飽きないものだとは驚きました。手話時のキャラクターの表情がかなり豊かで、また感情を表情や仕草で伝える手段としてはむしろセリフよりも効果的に発揮されていたように思います。

しかしながらなんといっても僕の涙腺を爆発させたのは、合唱コンクールの時に、
マイルズとのデュエット曲が、家族の耳に届かないと言うあの描写。

無音の中、自身の娘が主役の舞台で戸惑う両親ですが、それに反して周りのリアクションが良く、感動していたり、中には泣いている観客もいます。
しかし、最愛の娘の歌声が両親には届かない。それが悲しくって悔しくって、もう抱えていたクッションに何粒涙が落下したかわかりません。

また、その後帰宅時に父親からどんな歌を歌ったのか、もう一度歌ってほしいと言われた際、
父親は彼女の発する歌の響きを確かめるように顔を近づけルビーの喉に手を添えてなんとかしてそれをどうにか感じ取ろうとするシーンでは、もう無理でした。

また、そこからのオーディションでは、遅刻して楽譜すら忘れた彼女への確かに作中でご都合的にV先生が現れ伴奏をさせてくれと頼み出たり、
両親が二階席へ現れるなどの、もしかしたらダメだよと言われてしまうような展開ももうそれでもいいからなんとかやらせてやってほしいと、そこへあの手話がくるので、
もうラストは笑いながら泣いてました。

作中でV先生は歌の上手い下手ではなく、歌で何を伝えたいかが重要だといってましたが、それまでの溢れた感情があの歌いながらの手話に収束されていたと感じたラストにはもう本当に大満足でした。

誰がなんと言おうと、まぁ誰も何も言いませんが、僕の中でトップ5には入る名作だと言う評価は妥当です。

完全にお勧めできる一本であり、後世に伝えたい一本でした。ありがとうございます。

今回はこの辺で。
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