Inagaquilala

密航者のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

密航者(2021年製作の映画)
3.6
宇宙船の中で繰り広げられる密室劇は、古くはスタンリー・キューブリックの映画史に残る名作「2001年宇宙の旅(スペース・オデッセイ)」(1968年)などがあるが、この作品は乗員3名で地球を後にしたのだが、予定せざる搭乗者が発見さされたことで巻き起こるサバイバルの物語となっている。出発後に発見される「密航者」は、離陸準備のために作業をしていたエンジニアで、作業中に意識を失ったため、二酸化炭素除去装置の中に取り残されてしまった。元々乗員2名でつくられていた宇宙船に今回は3名(船長、医師、生物学者)が乗り込んで火星に向かうところだったが、不運なことに、二酸化炭素除去装置が壊れてしまい、そのうえ酸素をつくりだすシステムもうまくいかない。誰か1人、下船させなければ全員が危機に陥ってしまう。地球から離れた宇宙の中で、どのように生き残るのか。それがその物語の最大の焦点だ。

まず、宇宙船の中に取り残された人物が生きているという設定からして、やや苦しいのではとは思っていたが、それをスルーして考えれば、このサバイバル劇はなかなかスリリングだ。後半には、宇宙空間に出てのアクションシーンも設定されており、あの手この手でサバイバル劇に緊張感を与えていこうという展開は悪くない。お決まりのエイリアンやコンピュータの誤作動もなく、あくまで搭乗する人間たちのドラマとして描いたところは評価されるべきだと思う。この展開では、さすがにラストはハッピーエンドとはいかず、少々物足りない幕切れとはなっているが、自分が想像したものとは多少異なっていたので、そこは若干の加点をしてもいいかもしれない。Netflixの配信作品だが、宇宙を舞台にしてはいるが、いかにも劇場公開では難しそうな人間ドラマをこうやって観られるのは悪くない。
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