deenity

隔たる世界の2人のdeenityのレビュー・感想・評価

隔たる世界の2人(2020年製作の映画)
4.7
昨年もマイブームみたいなのを作ってそれに沿って鑑賞していましたが、今年はとりあえずNetflixオリジナル作品をちょっとずつ抑えていこうかと思ってます。まあサブスクもそれだけではないので縛りとしては緩めでやってこうと思うので、もしNetflixオリジナル作品でおすすめがありましたら教えてくださるとありがたいです。

とりあえず最初は30分でサクッと見れちゃう本作。2021年アカデミー賞で短編映画賞を獲得した作品ですね。
それにしても昨今のネトフリ映画は強すぎますね。アカデミー賞辺りでも当然のように受賞、またはノミネートされてきますし、これが定額で見られるのだからNetflix様様ですよね。

話は逸れましたが、本作に関しては非常に短い作品なので内容に触れようとするとどうしてもネタバレに触れてしまいます。また、本作に関してはネタバレなしで見ていただいた方が楽しめる気はするので、まだ未鑑賞の方はその点ご了承いただけると幸いです。




本作が描こうとしているテーマってのは正直明確ですし、その辺りの難解さはなくスッキリとした作りになっています。
類似作だと『フルートベール駅で』っていう実話を基にした作品がパッと浮かびましたが、何なら同じ事件を扱ってるのかと思ったくらいですがどうやら別物みたいですね。あとはキャサリン・ビグロー監督の『デトロイト』とかもテーマ性としては近しいものがありますかね。

パッケージにも描かれているように、黒人に対する白人警察の対応を問題にした作品ですね。ジョージ・フロイドという黒人が白人警察の不適切な対応により殺害されてしまった実話を基にしており、事件から2ヶ月後に本作は作られたようですね。
『デトロイト』の時にも衝撃を受けましたが、50年近く前の人種差別問題が未だに変わらず残っている現状で、やはりまだこういった作品が作られなければならないという現実。エンドクレジットがストレートにそれを物語っていますよね。本作の基となったジョージフロイド事件も所詮はその一部でしかなく、他に挙げられた名前も一部の被害者でしかない。やはりBLM運動は変わらず向き合うべきだということを改めて提示している作品でした。

ただ、本作の類似作としては『恋するデジャ・ブ』も挙げられるだろうと思っていて、流行りのタイムループ物なんですよね。
これが見事にハマってるんですよね。洒落た黒人デザイナーが出会った女性の家から出て愛犬の待つ家へと帰ろうとすると、白人警察に絡まれ、不当な圧力をかけられ殺される。そして目覚める。また同じ繰り返し。
このタイムループがタイムループでなければならない意味をちゃんと持っていますし、本作をただの堅苦しい映画にしようとしておらず、娯楽としても楽しめる作りにしているのが上手いところですね。

別の対応をしようとしても、その場を切り抜けたと思っても、何なら彼女の家にとどまったとしても、何をしても殺される。
ただ単に脱出ゲーム的な話ではなく、本作の作り自体がテーマ性に関わってくるという構造自体が素晴らしいですね。

そして最後にそこで彼が選んだ行動。そしてそれに対する相手の対応。
サクッと見て、そして少しでもこのBLM問題について向き合って考えてもらえるといいなと思います。本作でいえば愛犬がそうであるように、きっと誰にも愛する人、待っている人がいるのでしょうから。
deenity

deenity