くらら

コットンテールのくららのネタバレレビュー・内容・結末

コットンテール(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

良さを説明するのが難しいけど、心にじーんと響く映画だった。内容こそ違えどPerfect Daysを観た時のような豊かな時間。
カメラアングルや最小限の音、言葉もキャスティングもとても良い。
時系列はバラバラで説明も台詞もミニマムなのに置いていかれることなく、登場人物それぞれの気持ちが分かっちゃうのもすごい。

父親が不器用で子どもと上手くコミュニケーションがとれず母親が家庭のバランサーになってるのは、自分の両親を見ているようで色々思う所があった。
明子は兼三郎のことを自分の世界があると認めているけど、子どもからすればその世界に入れず置いてけぼりと感じてしまうのも痛いほど分かる。

そして兼三郎の明子への愛が揺るぎないのは介護をする姿で分かるけど、だからこそ病気が分かった時に彼女が求めていた言葉をかけられなかったことへの後悔や、病気が進行する中で息子へ素直に甘える妻の姿が切なかった。
個人的には1年前に亡くなったお茶目で愛に溢れる祖父が、一途な愛情で認知症の祖母の介護をする姿を思い出して泣いてしまった。

近い関係であるほど素直になれず、イギリス人親子に助けられたことで少しずつ兼三郎が変わろうとする姿は良かったが、この親子や明子、トシ夫婦がたまたまみんな優しい人だったから、一歩前に踏み出した兼三郎が受け入れられたんだと思うと彼は相当運が良い幸せ者だ。
母親がバランスを保っている家族は日本に当たり前のようにたすさんいるけど、イギリスの親子を見てこれって日本だけなのか?というのも気になった。

愛する妻が産んでくれた息子がいて、その息子が選んだ愛する人にネックレスが受け入れられ引き継がれていくのは、明子がみんなを繋げてくれたんだろうなとグッときた。

家族の関係や介護のリアルさとイギリスの豊かな自然や妙に上手く事が進む不自然さが絶妙なバランスで、リアリティがあるのにファンタジーを観てるような不思議な感覚も好き。
今日はお寿司と濃いリンゴジュースを買って帰りたい。
くらら

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