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女と男のいる舗道のtakのレビュー・感想・評価

女と男のいる舗道(1962年製作の映画)
4.1
「好き勝手に生きる」と題されたこの映画。フランスの判事が書いた実際の売春婦の記録をもとに、ゴダールは一人の女が売春に至るまで、そしてその末路を映像化した。

事情はあるにせよ一人の女が堕ちていく様を観るのは嫌だなと思う方もあろう。僕もそういう話は好きではない。ところがゴダールはそんな痛ましさだの女の悲哀だのを、観客に感じさせることなどこれっぽっちも考えてはいない。主人公ナナの日常を、路上に出したカメラでひたすら追っていく。その視線は時に冷たいドキュメンタリー風にもなるけれど、被写体への愛情が感じられる視線だ。

これはカリーナとゴダールの蜜月時代の映画だけになおさらなのだ。何よりもこの映画はアンナ・カリーナの魅力によることろが大きい。履歴書を書きながら、指で身長を計る姿なんて実に可愛い。同じ話をイザベル・アジャーニあたりで今撮ったら、きっとドロドロの堕落物語なのだろうけど、カリーナの魅力でお洒落な映画に見えてしまうから不思議。

実は僕は「勝手にしやがれ」が嫌い。初めて観たときには、あのズタズタの編集に気分が悪くなった。映像はおろか音楽までコラージュされて、ゴダールの映画音楽担当する音楽家は可哀想とまで思った。じゃぁ「女と男のいる舗道」は嫌い?と聞かれたら・・・好きだ。こちらは実際に同時録音がされて生活の生々しさが感じられるし、カフェやレコード店での長回し撮影が僕には心地よかった。娼婦の生活をテンポよくみせる場面や、哲学について語る場面が好きだ。
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