ミーハー女子大生

そして、バトンは渡されたのミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
3.0
一般鑑賞者の92.8%が泣いたという宣伝文句に惹かれ、久しぶりに気持ちの良い涙を流したいと劇場へ足を運びました。

しかし結論から申し上げれば、結局最後まで私の目から涙がこぼれる事はありませんでした。
スクリーンの中では役者さん達が「ほら私はこんなに感動してるんだよ。一緒に泣かないと変だよ」と言わんばかりに号泣していたし、劇場内でも所々ですすり泣きが聞こえてきましたが、私は泣けませんでした。

即ち、泣かないという僅か7.2%の少数派に加わってしまった自分。

それは何故なのか、あくまで個人的な視点で考えてみると、やはり物語全体に漂う「拭えない違和感」と、途中途中の「退屈な展開」が原因なのだと思い至りました。

この作品は一応どんでん返し在りきなので、ネタバレし過ぎない様に気を付けながら、具体的な内容に触れていきます。注意をお願いします。

まずは石原さとみさん演じる梨花。
この人物は正直好感度がかなり低かった。
「目的の為なら手段を選ばない」という冒頭の人物紹介から始まって、大森さん演じる水戸に「出来るだけ高額の生命保険に入っておいて」と意味ありげに頼む。
つまり金目当ての結婚を匂わす訳です。
これにより私は、彼女の言動を全て猜疑心の眼で見るようになりました。
一旦そうなってしまうと、娘であるみぃたんとの楽し気な触れ合いも、わざとらしさばかりが目立って、退屈極まりないものに成り下がります。

水戸の突然のブラジル行きも、全く共感出来なかった。
家族に何の相談も無く会社を辞めて「一緒に行くよね?」では、流石に身勝手が過ぎます。
ここはせめて、会社の命令でやむなくという展開にして欲しかった。
そこから全く出番が無くなる水戸。
保険金目当てで密かに殺されたのか、、、?と勘繰る私。
でもそれにしては梨花とみぃたん貧乏してるな、、、
知らぬ間に保険金で豪遊でもしたのか、、、?
梨花に対する疑いの気持ちは、一向に晴れる様子がありません。

そして、いつの間にか水戸と離婚したことになっていた梨花は、市村氏演じる金持ちの泉ヶ原とあっさり再婚。
おいおい、、いい加減にしとけよ。
しかもこの泉ヶ原という男が、お人好しにも程がある。
終始物語を円滑に回すためだけの道化を演じ続けており、自分の意思というものをほとんど感じることが出来ませんでした。
特に終盤の「自分は高齢で先が長くないから、、」的な台詞は、演じる市村氏が気の毒に思える程寒かった。

次に田中圭氏演じる森宮。
彼はとにかく違和感が付き纏う人物でした。
父親として当たり前。
親として当然。
戸籍上は娘であるらしい、永野さん演じる優子に延々と言い続ける。
いい人間というのは伝わってくるし、愛情表現が不器用な奴と好意的に受け止める事も可能ではありましたが、残念な事に非常にしつこい。
こういうのは適度にやらないと「親切の押し売り」にすら見えてしまい、素直に感情移入出来なくなります。

そんな森宮に散々世話になっている様子の優子。
いつまで経ってもお父さんと呼んであげなかったり、父親ぶらないでと言ったり、、仲は良さそうに見えるが恩知らずな印象。

とにかく彼女の出てくるシーンは、軒並み起伏が少なくて退屈でした。

更に梨花の行動は苛立つわ、みぃたんは流石に泣き過ぎてウザいわで、全体的にどこで面白みを見出せばいいのか分からない有様。

それでも、何かしらのどんでん返しが待っているはずだと、自分に言い聞かせて辛抱強く観続ける自分。
そして確かにその時は訪れます。

でも驚くほどではありませんでした。

実は、、的な展開のクライマックスも、自分的に納得は難しかった。

「長い期間、無責任に育児を放棄した人間」が、後付けでどうなったか知らされても、そこに強い愛情があったとは到底思えないからです。
話の内容に、丁寧な心理描写や葛藤や具体性が足りないので、感情移入は厳しいの一言。
それでも92.8%は泣いたというし、折角高い金払って観ているのだから、せめて一筋だけでも涙を、、と頑張ってはみましたが無理でした。

総評として原作は未読ですが、脚本や構成を見直せば自分も感動出来た可能性はあったと思います。
まあ大多数の人が感動したというし、私の心が冷めていただけかもしれませんが。。

ここまで書いておいてなんですが、この映画が嫌いなわけではないです。
137分を長いと思わなかったし、俳優さんは皆とても素敵でした。
2回目を観たらまた違った見方ができるだろうか。

ストーリー 3
演出 4
音楽 4
印象 2
独創性 3
関心度 2
総合 3.0