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そして、バトンは渡されたのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

まぁまぁ。前半は結構好きだったが、オチが納得いかないことだらけで後半はちっとも飲み込めなかった。

主人公=みぃたんだというのは割と序盤でわかるようになっているので、それがオチだったらしんどいなと思っていたのだが、ちゃんと中盤で明かされたのでそれは良かった。田中圭演じる父親が主人公の演奏を見守るシーンでみぃたんをオーバーラップさせるという見せ方も好き。正直この中盤の演奏シーンが自分の中ではピークだった。ここで終わっていても良かったくらい。

その後は延々と蛇足のような退屈な展開が続く。個人的にどうしても彼氏を好きになれなかったのも痛い。はっきりと言葉に出来ないのだが、演じている役者のせいなのか演出が悪いのか、なんだか終始ナルシズムが漂っているようで、観ていて非常に鬱陶しかった。ピアノの才能があるのに母親への反発心で音大をやめ、全く才能の無い料理人を目指すのにもイライラ。いい年していつまで反抗期やってんだ。皆で大切に育ててきたみぃたんをどうしてこんな男にやらにゃいかんのだ、という気持ちでいっぱい。

そして石原さとみ演じる母親がずっと病気であることを隠しており、ひっそりと死んだというオチ。露骨に泣かせに走るこの展開、考えれば考えるほど頭に疑問符が浮かぶ。「二度も母親を失わせる思いをさせたくない」と言うが、わざわざ実の父親と引き離した上で「母親に捨てられた」という傷を新たに負わせることは良いのか?死を見せたくないからって、その辺の人が良さそうな男を騙して娘を押し付けて自分は消えるのってどうなんだ。あまりに無責任ではないか。結果的に男が娘と良好な関係を築けたから良かったようなものの、二人それぞれの人生を台無しにする可能性もあったわけで。というか実際男の人生はつぶしたようなもんだよね。彼は結局普通に結婚して自分の子供を持つことを諦めざるを得なかったわけだから。子育てを丸投げなのもどうかと思うし、経済的な負担だって大変だったと思う。あまりに身勝手。病気だからって身を隠した割に、その後かなり長い間生きている感じだったのも変。10年近くは生きてたよね?娘の独り立ちまで普通に子育てできたんじゃないの?

というかその理由で娘に所在を隠していたのなら、死後絶対に娘に死を知らせちゃ駄目だろう。これまでの彼女の我慢が全て水の泡だし、どうせ知らせてしまうくらいだったら市村正親はとっとと彼女が生きている内に強引に娘に会わせてやるべきだった。しかも死の直後に知らせるって、あとほんの少し早ければ死に目に会えたってことじゃん?最悪すぎるタイミングだよなぁ。

しかしなんと、どうやら原作では母は死んでおらず、母と娘はちゃんと再会しているらしい!お涙頂戴のためだけに酷い原作改変をしたものだ。

石原さとみと娘役の稲垣来泉ちゃんがものすごくかわいいので、この二人がキャッキャしているシーンはとても幸せそうだし眼福だった。あまりに全員が理想的な"良い人"過ぎて現実味は全く無いが、それでも全員が主人公を心から愛している様子が伝わってきて、前半は割と好きだったな。(まぁ「相談もせずにブラジルに引っ越そうとする父親のどこが優しい父親なのか」とか「母親もそもそも病気のことをちゃんと夫に伝えた上でブラジル行きについて話し合うべき」とか「家庭の事情を聞いた途端に手のひら返してすり寄ってきたいじめっ子たちとよく仲良くなれるな」とか、色々と言いたいことはあるが。)
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