西本智実さんの指揮での演奏は生で二回。DVDも持っている。
最初見た時(15年くらい経ってると思うけど)てっきり美青年と思ってました。😸
その時から素晴らしいパフォーマンスをされる指揮者だと思い魅了されました。
この映画の最大の魅力は彼女の指揮する姿を観られる事。指揮者ってコンサートでは後ろ姿で顔の表情は見えませんからね。
美しい所作、迫力の気合い。めちゃくちゃエモーショナルです。
彼女は更に映画の音楽監督も引き受けています。
そのほかの注目点は、檀れいと檀ふみが母娘で出てきたこと。
檀ふみさんがボケが入ってる母親役なんですが、笑った表情がとても柔らかくて本当の親子でも不思議ないほど上品な雰囲気が似ていてビックリ。
あと、役者さん達は楽器をガッツリ練習して音も出せる程に上達したらしい事。
日本では珍しい事に、コロナのおかげで練習がたっぷり(1年位)できたらしい。
単なる演技ではなく楽器と向き合った時間が宝物になるでしょう。
さて、映画の評価ですがこれは群像劇なんです。
なので主人公は誰?状態です。
主軸のストーリーは楽団の存続の話。
花村の夢の実現でもあったアマチュア交響楽団は経営難から解散が決定。〝有終の美〟を飾る「さよならコンサート」は実現できるのか?
というお話。
クラシック音楽好きな水谷豊自ら監督と脚本と出演もしている、力作なんだと思います。
西本智実も水谷豊人脈で実現。
しかし、なんだか不思議なものを観てしまった感が残る。
映画のイントロは緑が深い山間の森のど真ん中に忽然と現れる西洋の大宮殿。
まずこれが謎!これは何?日本なの?
実はこれってCGなんですってね。
洋館は赤坂の迎賓館の側を使ってます。
物語に不要な上、全く不釣り合いに思われました。
他の場面は普通に街中だったり川辺だったりなので。
全体的に不自然な程のプラトニックラブ。
なのに一人だけエロいギャグをかましてくる。
皆さんいい人。なのに一人だけ犯罪者
皆から敬意を集めている優れた音楽家が、演奏途中で病に倒れるという大事件。
なのに鼻血ブーでバッタリというギャグ
団員も減ってる素人楽団。
なのに指揮者が二人もいて、互いに忌み嫌って争っている?
片一方の指揮者が嫌われているらしいけれど、その理由が全くわからない。
人間性と音楽性って。だからそれがなんなんですか?が描かれてない。ただ変人っぽいだけです。
「ユーモアを入れたかった」?
ユーモアとつまらないギャグは違うよ〜。
コメディ要素が感動の邪魔をしている。
音も声もなんか普通より小さくない?なのに足音大きすぎで気になります。
場面の切り替わり、いちいち暗転しなくても
音楽好きだと何かが犠牲になるの?
音楽をやる人達へのリスペクトを込めているのはわかります。
楽団は終わるけど音楽はやめないでね。
一人でも音楽はできます。
それは…オーケストラが奏でるハーモニーを愛する音楽家には、酷い言葉ではないでしょうか?
そもそも楽器が好きなだけならオケには入らない。
ジャズでも室内楽でも仲間で演奏できるシーンはあります。
でもね。
交響曲とか、オーケストラで演奏したい人達なんでしょ?
お別れコンサートで盛り上がったね!
いい思い出だったね!
では、こちらは盛り上がれないんですよ。
温かい気持ちに溢れている映画なのに
細かい所で褒められない。
悪くないのに、感動できない。
せっかく西本智実なのに。もったいない。
エンディングのボレロも全曲演奏じゃないし。
どうして?どうして?な部分のある映画でした。