イタリア映画祭2021の1本目。
全10作鑑賞したなかでも一際好みの作品。
ユダヤ人の医者が事故で瀕死の男を助けるものの、ハーケンクロイツのタトゥーを見るや否や救助を止めて男は死亡。
だがネオナチ男は父子家庭ゆえに娘と息子だけが残されてしまい、罪滅ぼしとして娘を家政婦として雇う。

SF要素を除いた『アナザープラネット』的な静かなる贖罪。父を見殺しにしたことを伏せて徐々に娘と恋に落ちる。
ネオナチ家族をユダヤ人が雇うという構図が意味深。息子が根っからのネオナチで、「暇だし移民でも殴りに行くか！」と街へ繰り出すのがヤバイ。
一番下の小さな弟は、「家族はユダヤ人を嫌うけどみんなと何が違うのか見ても分からないよ」と言いながらナチュラルにナチス式敬礼をする。
親に思想を強いられるってのもある意味被害者だなと。

ネオナチ父が残した多額の借金のゴタゴタを、皮肉にもユダヤ人に助けてもらう。でも2人ともこの男が父を見殺しにしたことを知らない。
贖罪でありながら、優越しているようにも感じた。
静かな映画だけど複雑な感情だけが激しく揺れ動く。
物語も作風もめちゃめちゃ好みだった。

人は何があっても憎みあわずにいられるか。

子供の頃の残酷な父の教え。それがずっと胸にあったかなかったか、セグレは大人になって医者に。

何不自由なく暮らしていたところに、自身を試されるような出来事が。
ナチスの時代を生き抜いてきた父の姿、残酷な選択を自分に仕向けた父の姿がよぎる。命を救う医者という職につきながら命の選択をしてしまえば罪悪感に駈られる。一瞬の葛藤が後々の行動に響いてくる。

過去は自分なりに向き合って前を向いて生きてきたであろうセグレだけど、それを全くなかったことのようには出来ないのが人間だなぁ。

ネオナチとユダヤ人という、相反する人たちが協力しあって助け合っていけるのか。

過去の傷や人種や立場を越えて人間愛をもつことができるのか。

どの世界にもどの人間にも共通する普遍的なテーマ、これが世界に浸透すれば戦争は起こらないはずだけど、そうもいかない世界になっているのが現実で、いろいろ考えてしまうのだった。

• #ナチスホロコースト関連映画_みむさん

イタリア映画祭2021のオンライン配信にて。

交通事故を目撃した医師のシモーネは負傷者の男性を助けようとする。
しかし、ホロコーストの生き残りであった父を持つユダヤ人の彼は、男性の胸にあるナチス（ネオナチ）のタトゥーを見て救助の手を止めてしまい、男性は助からず亡くなってしまう。
贖罪の気持ちからシモーネは男性の残された子供たちに接触する。

マウロ・マンチーニ監督の初めての長編作品。
セリフは多くないけれど、それでも登場人物達の気持ちが伝わってくる演出が良かった。