ルッキオ

三人の女のルッキオのレビュー・感想・評価

三人の女(1977年製作の映画)
4.5
30年ぐらい前、深夜テレビで放送されていたのを鮮明に覚えてる。内容はすっかり忘れてるのに、なんかすごい印象に残っていてずっと観直したいと思ってた大事な作品。何気なくつけた地上波で観る映画体験は、目的を持って観る映画より強烈にインパクトがあった。
ブロックバスター的な映画ばかりじゃなく、名画的な映画への興味を教えてくれた内の一本なのかもしれないなと、改めて思う。今もって、こういう女性映画が好きなのは、この映画の影響が大きかったのかもしれない。

ああ、そうだった、シシー・スペイセクの強烈な二面性に惹かれたんだった。今観てもゾクっとするような女性の二面性を見事に演じてて素晴らしい。
76年「キャリー」と80年「シャイニング」をつなぐ女優陣の共演が何気に豪華で当時は分からなかったな。

モーテルを舞台にした二人の女性の白昼夢的物語は「マルホランド・ドライブ」ぽいし、暗喩的な表現はDリンチとの共通点だった。
長回しや群像劇、アイロニーに満ちた作品の印象が強いアルトマン監督だけど、こういうシュールでメタな一面もあったわけだ。
何より二人の女性の物語が「三人の女」というタイトルなのが最大のミステリ。
後の作家に与えた影響は間違いなく大きいはず。


リハビリセンターや乾燥した砂漠など死のイメージにおおわれた世界観と、そのイメージが重なるかのような後半のツイスト。
不快なまでに無関心な他人と、それでも関係を築こうとするミリーの描写はホラーに近い(演じるのがホラークイーンの二人なのでなおさらね)
ミリーは間違いなく、閉鎖的で抑圧された環境にいる女性の象徴だと思った。そこから解放される女性の象徴がピンキーなのではないだろうか。
「三人の女」というタイトルは曖昧なまま、真相も曖昧なまま不思議な余韻で終わる。

アルトマンが色んな映画の観方を教えてくれたような気がする、2019年の今日この頃。
ルッキオ

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