原題:Ajeeb Daastaans 2021年 インド ヒンディー語
おなじみ、ヒンディー語映画のヒットメーカー、カラン・ジョーハルのダルマプロダクションとNetflixが組んだオムニバスインド映画。
前回までの実績のある有名監督4人とは変わり、監督はダルマプロダクションで仕事をしたことがある人がほとんどですね。
第一話:愛人
IFFJで、『バドリナートの花嫁』他一作が上映されているシャシャーンク・カイタンが監督。これは平凡というか、短編として他の3本と比べてもちょっと、という感じでした。ど真ん中のコメディー寄りのダンスと歌がふんだんにあるロマコメでヒットを飛ばしている人なので、人数合わせとしてもここに入れるのは気の毒かな?(『バドリナートの花嫁』は良作)
筋作っただけで一杯一杯で、何をしたかったのかがよく分からない。内容は政略結婚をして夫に顧みられない妻と高学歴エリートの運転手の息子の情事の果て。
これ、コメディー仕立てにすればまだ見られたのではないかと思いました。
第二話:おもちゃ
これはラストまでは良かったんですよね。
現実ではあり得る話ではありますが、こういう話は実社会では伏せるでしょう。フィクションであっても、乱暴にぶっこむのではなく、やるならもう少し繊細に扱わないと・・・
姉妹の住んでいる家のデザインも含めラスト以外は才能を感じる作品だったので残念。
第三話:濡れたキス
工場に勤める被差別カーストの有能な大卒女性と職場の花として採用されたバラモン女性の淡い恋。
被差別カーストの女性の二重に差別を受けている状況だけでなく、バラモンとしてのメリットを享受していたつもりの女性も囚われていることがわかる。秀作です。これは今まで見た全てのインド映画でベストかもしれない。
監督はヴィッキー・コウシャルのデビュー作、”Masaan”を演出しています。これはNetflixに入っていて時々検索に引っかかるのですが、地味な映画なので探すのが大変。(気分であったりなかったりということがあるのだろうか??)こちらも確かカンヌで賞を取っていて見事な映画でした。
第四話:沈黙に包まれた会話
これも色々と含みのある良い映画です。
役者さんも地味ですが、実績のある確かな人ばかり。
ヒロインの手話、表現力があって実にキュート。
聴覚障害の娘のために手話を身につけた妻はひょんなことで聴覚障害の写真家と知り合い、心がかよう。夫とは最近すれ違いが多く口論が絶えない。
これ、本当に見事でした。あの後修復はできるのでしょうか?写真家があえて手話以外を封印している理由を考え合わせると結構難しそうな気がするのですが・・・
娘さんは本当によく見ているというか、学んでいますよね。
監督は『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 』のカーヨーズ・イーラーニーということですが、メジャー向きの個性ではないでしょうが、素晴らしいです。生活ゆとりがあるでしょうからお父さんのボーマーン・イーラーニさんが売れているうちはマイペースでじっくりいい作品撮っていって実績を積んで欲しい。将来が楽しみです。
最初の二作はちょっと残念でしたが、他の作品は滅多にない傑作でした。
次のオムニバス、『秘密のアンソロジー』は学んだのか、短編向きでない監督は参加していないようです。