ナガエ

野良人間 獣に育てられた子どもたちのナガエのレビュー・感想・評価

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エンドロールを見るまで、この映画が「フィクション」なのか「ドキュメンタリー」なのか分からなかった。

「フィクション」だとしたら、メチャクチャよく作ってあるなぁ、と感じながら見ていた。本当のドキュメンタリーにしか見えない。ただ、頭のどこかで、「ンなわけないだろ」という声がずっと響いていた。この話がホントなんてこと、あり得るか?しかし、非常に絶妙なのだ。完全に否定はできない程度にリアリティがある。

「ドキュメンタリー」だとしたら、ちょっと凄まじい。こんなこと、実際に起こったのか、という衝撃がハンパない。狼に育てられた少女など、先行する事例はいろいろある(中にはフェイクもあるようだけど)。本当にあったことなら、ニュースとして耳に入ってきてもおかしくない気はするけど、情報が山程存在する現代であれば、世の中の「衝撃的な出来事」に限ってみても、そのすべてを知る余地はないだろう。

どっちとも受け取れるし、しかしどっちだとしても凄い、という映画で、なかなか奇妙な映画の見方をしたと思う。

ただ一方で、面白かったのかと言われると、ちょっと微妙だ。途中、寝ちゃったし。最初は一人だった子どもが、途中で三人に増えていてビックリした。いつの間に。

つまらなさの要因は、「フィクションって可能性もあるんだよなぁ」という感覚が抜けなかったからだろう。僕としては、ドキュメンタリーであってほしいと思いながら見ていた。ドキュメンタリーだったら、これはちょっと凄まじいなぁ、と。フィクションだとしても、映画としては確かに凄いけど、ただ、フィクションだとするなら、「よくこんなにドキュメンタリー感を出したなぁ」という驚きが優先で、物語的にそこまで面白いという感じじゃない。

ドキュメンタリーだったらいいなぁと思いながらも、そう断言しきれない、というか、さすがにこれはドキュメンタリーじゃないよなぁ、という感覚が出てきて、イマイチ乗り切れなかった部分がある。

一応、どちらか知らずに見たいという人もいるだろうから、この感想ではフィクションなのかドキュメンタリーなのかは書かないでおこう。見る前にどっちか知りたいという人は、検索すれば普通に分かると思います。

内容に入ろうと思います。
舞台はメキシコの山奥。30年前、山奥にある家で火災が起こり、男性一名、子ども三名の焼死体が発見された。子どもの身元は不明だったが、男性は分かった。フアンという元僧侶で、修道院を去った後は山奥で一人で暮らしていた。僧侶時代を知る者は、もの凄く頭が良かったと語る。
この火災を調べているジャーナリストは、フアンと親しい人物に行き着く。彼は興味深い証言をした。フアンと彼は山奥で泥だらけの少年を発見した。食生活の違いからか歯は崩れ、熱さと冷たさの区別がつかず、言葉は一切喋れず、四つん這いだった。しかしその目には、間違いなく知性が宿っていたという。
フアンはその少年を捕獲し、このことは黙っておくようにと彼に口止めをした。
その後フアンは、少年に教育を施すことに決める。この時の記録映像が残っていた。別の友人の元へとテープは送られていたのだ。これを見て、少年の発達度合いを評価してほしい、という手紙と共に。
そのテープには、フアンと少年がどのようにコミュニケーションを取り、どんなやり取りがなされていたのかが記録されていた…。
その一方でジャーナリストは、火災そのものも調べている。森の近くのサンフアンという小さな町では、フアンが子どもを監禁しているとか、女性をさらって子どもを生ませたのだという噂が流れており…。
というような話です。

なかなか興味深い作品ではありました。
ナガエ

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