misty

親愛なる君へのmistyのレビュー・感想・評価

親愛なる君へ(2020年製作の映画)
4.0
同性パートナーを失い、残された義母と息子を養い、贖罪のように生きる日々。病を抱えた義母の死を機に居場所は急速に瓦解していく。死んだ夫の家族の面倒を見るのは妻にとっては当たり前、それが同性であるが故に通らない現実。だけどたった一人の息子のこと、何があっても愛してる。

「死んだ夫の家族の面倒を見ている妻にも同じことを言いますか?」という台詞や、同性パートナーである故に抱え込んでしまった過ちや罪悪感、居場所のなさを、異性愛の物語であれば考えもしない様々をこの映画は提示する。けれど同時に、愛はきっと返ってきて、この家族の誰もの心に生き続けることも。

幼い息子の成長を見守るふたりの日々は、血が繋がっていなくてもただかけがえなく美しい。「大きくなったな」という言葉は、積み上げてきた日々がもたらすもの。正常じゃない環境だと誰に断じる権利があるのだろう。この映像が映しているのはただ真摯に愛情深き人の姿と彼らが過ごしたささやかな日々。
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