あでぃくしょんBBA

前科者のあでぃくしょんBBAのレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
3.1
2023.04.10 配信で視聴
原作漫画は未読でTVドラマは未見。

この作品は森田剛の熱演あってのものではなかろうか(彼にフォーカスするとスコアは4.0以上だ)。これで森田剛が日本のどの映画賞でも助演男優賞をとってないのが不思議だ。
森田剛以外のキャストでは磯村勇斗と石橋静河、および母を殺された子役2人の演技が光ってた。
特に「静」の微妙な演技ができる俳優として磯村勇斗に注目していきたい。

主人公は、元受刑者に徹底的に寄り添うことを信条とする保護司である。しかしこんな保護司は現実にはたぶん存在しない。
そもそも若い未婚女性が保護司になるのは極めて稀だ。彼女のように保護観察対象者と距離を詰めてたら、相手が男性の場合、劣情を抱かせる原因になるし、相手が女性で年上だと「あんたに何がわかる!」とはねつけられるのがオチである。それ以前に、実働の量と質とにかかわらず少額でも手当が出る民生委員と異なり、保護司には対象者のために動いた交通費くらいしか実費支給されないので自分の生活に窮する。現実の保護司の多くが神職や僧職、定年退職した教師や公務員なのはそのためである(主婦もいるにはいるが大抵が未成年担当)。

それにしても、なんで主人公をこんな観音様のようなキャラにしたのか。主人公のキャラ以外は極めてリアルな造形なのに、だ。
エンタメ世界じゃゴッドハンドで清貧な医者や滅私奉公の看護師や教師が跋扈してるから、こういうのもありっちゃありなんだろうが、「犯罪」と「更生」が軽いものになってしまいそうで釈然としない。
また主人公・阿川佳代は、行動は距離を詰めすぎなほど詰めるのに、話言葉には「おすまし」に近い距離があり、現実日本で2011年ごろから流行り出した「寄り添う」という言葉をすぐ口に出す。
口に出しちゃ値打ちが下がるコトバがあるってこと、誰かこいつに教えてやれんのかな。更生保護女性会や宗教法人のご婦人がたがよく使うんだよね、「寄り添う」。
あでぃくしょんBBA

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