まいとん

天守物語のまいとんのレビュー・感想・評価

天守物語(1995年製作の映画)
3.5
新派もの 泉鏡花の完全な映像作品である
芸術映画として非常に完成度が高い
玉三郎は一時期熱中して映画に取り組んだがもう少し作られても良かったのではないだろうか
歌舞伎や浄瑠璃の物語は時代を選ばず好んで映画にされてきた
新派は今では省みられなくなっている
溝口などのものが古典として鑑賞されるようになっているがまだまだ掘り起こせるものがあると思える

天界=魔界の話である
日本の物語ではあるけれどヴァーグナーの指輪のような北欧神話の世界に近い
舞台を日本に置き換えたというのが創造的だったのかもしれない
シェイクスピア劇を戦国時代の日本に置き換えた黒澤明の映画に近いか
ファンタジーとしても読み込める話である
カタストロフが無いので少し上品な仕上がりになっている

鏡花を味わうのにも新派を味わうのにも映画を味わうのにも良い作品になっている