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必殺仕掛人 春雪仕掛針のKamiyoのレビュー・感想・評価

必殺仕掛人 春雪仕掛針(1974年製作の映画)
3.2
1974年”必殺仕掛人 春雪仕掛針” 監督 貞永方久
脚本安倍徹郎  原作池波正太郎
池波正太郎の原作がもっている雰囲気が残っている

1973年に松竹でテレビ・ドラマを映画化した『必殺仕掛人』シリーズ3作目最後の作品。
『鬼畜』で再共演する緒形拳と岩下志麻のコンビ。
僕は昔から岩下志麻さんがお気に入りですので 

ギターとトランペットのテーマ曲が流れると、キターと喜んでしまう。なんかマカロニ・ウエスタンみたいだな。
そして、白と黒と赤の配色が素敵な、緒形拳の着物姿。
それにしても最後に登場するテーマ曲カッコいい!

梅安といえば緒形拳イメージが強い。人の良さそうな笑顔かと思ったら急に怖い目つきになる。その落差と飄々として人を食った演技。必殺シリーズの元祖。その映画版は三作作られていて本作がその最後にあたるらしい。

松竹「必殺仕掛人」シリーズ3作では、音羽屋半右衛門だけは山村聡だが、梅安を田宮二郎、西村左内を高橋幸治が演じていたが、2作目の「梅安蟻地獄」から梅安をテレビの緒形拳が演じることになった。この3作目は、梅安の仕掛のターゲットが、元恋人というベタな展開で少し物足りなさもあるが、強烈悪女の岩下志麻(しかも梅安の元カノ)の登場、前作よりも締まった佳作になっている。

ストーリー
漆器問屋の一家を皆殺しにして金を盗む凶悪強盗団が現れ惨殺された。この事件は、半年前、ここに後妻に入ったお千代(岩下志麻)が盗賊の首領であり、彼女の手引きによるものだった。
この強盗団主要メンバー3人を殺すことになるが、首領女性のお千代が抜けていた、
昔からの江戸の”人は殺さない”盗人たちのグループが
元締め(山村聰)に3人の殺しを依頼し、梅安(緒形拳)が1人ずつ殺していく事になる。
梅安が「お金の為に殺す事が良い」と言うのに対し、
彼の正体を知る浪人の小杉十五郎(林与一)は、
「お金の為でなく、信念や義憤の為に殺す方こそ正しい」と、仕掛の職業の根本的な問題を突きつけ、
実際に梅安や元締めの気持ちや行動も揺らぐ。
仕掛の対象の強盗団の首領はお千代で、彼女も4人目のターゲットになるのだが、梅安はお千代とかつて恋仲で、その後お千代を捨てた事がある、それぞれの使命の遂行と相手への恋愛感情との間で揺れる事になる。

最後ということで梅安も命を狙われることになる。過去に因縁のある凄腕の剣客に目をつけられ怯えた表情まで見せるとは意外。無情な人殺し一味の仕掛を依頼された梅安だがその仲間に因縁の剣客もいたという設定。
強盗団の一味として登場の地井武男は早々に仕掛られてしまう。もう少し彼の演技を見たかったので残念。
一味を操る女を岩下志麻が妖艶な演技で魅せているのが映画版らしいところ。上辺は虫も殺さなそうな風でいて内面は毒婦そのままであるという二面性をうまく出している。まだ若くて美しい岩下が演じると凄みがあり特に凍りついたような視線が怖い。

個性的な脇役達の魅力で一気に観せてしまう。
林与一の格好良さ、終盤に見せる山村聡の凄み、そして助演男優賞ものの花沢徳衛の名演。本当に昭和の役者は凄かった。
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