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裁かるゝジャンヌのditaのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
4.5
@ シネ・リーブル梅田 ~ゴーモン 珠玉のフランス映画史~  

もはや早起きにも慣れ、余裕で席についたものの始まる直前に眼鏡を落としてしまい足元を探るも見つからず、暗がりの中予備で持っていた1dayコンタクトを装着するという苦難を乗り越え鑑賞。ジャンヌの苦難に比べたらどうってことなかったです…苦難とか言ってごめんなさい。あまりの緊張感に買ったコーヒーを飲むこともままならずな80分、凄かった…。

聖女から異端者へ。クローズアップされた顔、その瞳から流れる涙をぬぐったのは最初の一度だけだったように思う。19歳の少女を詰問し、極限まで追い詰めるその様を見ながら、 奥西勝さんのことを思い出していた。お前が悪い、認めれば楽になる、悪魔のお告げ…いつの時代も真実は「作られる」ものでしかないのかとやり切れない気持ちになった。

一度は砕けた心を強い信念で取り戻した代償は自らの命。彼女はもちろん覚悟の上だったに違いないけれど、「もう…今から…?」という本音を聞いた(サイレントなので「見た」)時、どうしようもなく悔しかった。泣きそうな気持ちを必死で堪えた。彼女の流す涙を見て、わたしが泣いてはいけないと思った。

火刑された彼女を崇めることはしたくない。見物人の前で命が燃やされることはことばは悪いが無駄死にだと思う。死は死でしかない。死でしかないからこそ、わずか19歳の少女のその涙を忘れないでいようと思う。
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