イギリス ロンドンで1999年に立て続けに起こった3件の爆弾事件についてのドキュメンタリー。NETFLIXはこの手のドキュメンタリーが豊富で、且つ質が高いと思う。
デイヴィッド・コープランド。
ヒトラーを崇拝する極右の男。
若干22歳。
ブリクストン、ブリックレーン、ソーホーの3つの街で起きた爆弾事件は、このひとりの男の仕業である。「俺はナチだ」と言って憚らない。
この男はもちろん、本作に出てくるBNPという極右政党が怖い。少数派への差別を何の躊躇もなく煽る。彼らは徒党を組んで白人の権利を街中で声高に叫ぶ。下品で醜い。
3つの街ではそれぞれ、黒人や移民、アジア系、ゲイが狙われた。爆弾に大量に仕込まれた釘によって、彼らは片脚を失い、指や手を失い、顔を傷付けられ、音や光をなくし、そして命を奪われた。
極右政党の活動に潜入したアーサーの証言、治療に当たった医師の証言、警察関係者の証言は興味深く、そして被害者のそれは痛々しく苦しい。
アーサーによると、気をしっかり持っていないと、自分の思想までもが右傾化してしまいそうだったという。それだけそういった団体の刷り込みというか洗脳は強烈なのだ。
アーサーは、事件を未然に防げなかったことに無力感を抱いていた。それでも、犯人の特定に成功した功績は大きい。
一方で、コープランドは裁判においても卑劣だった。心神喪失により責任能力がなかったとして罪を逃れようとする。それを警察は、手紙を使った巧みな誘導で「心神喪失状態での犯行ではなかった」ことを証明する。
こうして犯人は、法の裁きを受けたけれど、残念なことに、世界のあらゆる場所に差別はいまだ存在する。文明や技術は進歩しても、人間の精神はまだまだってことか…