矢吹健を称える会

英雄の証明の矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
3.8
 見ていて、「一寸の虫にも五分の魂」という言葉が何度も脳裏を過った。いわんや人間をや。

 とにかく主人公が馬鹿で、やきもきするのだが、その情緒を否定するわけにもいかず、そうこうしているうちに事態がどんどんこじれて悪化していくという作劇がさすがアスガー・ファルハディ。しかも、今回は(観客がただちに気づきうる)小さな嘘と誤魔化しが重なっていくなかで、「真実」がみるみるうちに後景に退いていくさまが一種のスペクタクルになっていて素晴らしい。これは傑作『別離』とはまた異なる、新機軸のストーリーテリングじゃないでしょうか。
 「子ども」の扱いにも『別離』以来の真摯さを感じた。