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ニトラム/NITRAMのピポサルのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.3
「一昔前ではノロマとして扱われるけど、今は適切な治療が行われるから」と果たして本当に安心できるだろうか。その社会通念が現代の日本にどこまで浸透しているかわからないし、わかったとしても本人含め全員が望むような施しをされるのだろうか...。観ていてとにかく苦しい。話が進行すればするほど、ニトラムが画面に写っているだけで居心地の悪さを感じる。この禍々しい気持ちは『ノーカントリー』に通じるものがあるけど、それとはまた性質が違うような。
事件の前夜、母親の胸元にある十字架のネックレスが異様に輝いていたのが印象的。ニトラムに銃をプレゼントされたサーファーの男の表情もよく覚えている。派手すぎない演出やセリフと必要最低限の劇伴、そして言うまでもなくケイレブランドリージョーンズの演技、これは寓話なんかではなく現実の話なんだと常に訴えかけてくるような感じ。『X-MENファーストジェネレーション』のそばかす超音波くんがこんな素晴らしい俳優に...と思うと感慨深い。そして大好きな『ノーカントリー』にもチャリンコ少年として出演していたというのも本作が特別な作品に思える要因か。
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