何処にも適合できないまま嘲笑や屈辱に晒され彷徨う〝NITRAM〟が静寂の中で迎える制御不能。
疲弊する両親や傷みを和らげる出会いなど別の可能性を祈りながらも哀しき運命は史上最悪の銃乱射事件を止められない…様々な兆しを見つめながらも理由には届かぬ重たい緊張が途切れない。凄い。
発達障害を持つ彼が疎外され、自己肯定感を奪われていく中で窮屈で退屈な日常から抜け出そうと踠く。けれど羨望の先にある自分が壊される程に彼の心はもう理解の及ばない場所に行ってしまう。
純粋さと脆さから発現する危うい欲求、幼少期のエピソードなども更なる深い霧に包んでいき、只々息苦しい。
96年タスマニア島で発生した銃乱射事件を元にしてるけど劇中犯人の本名は一度も出てこないし事件を描くと言うよりNITRAMと呼ばれた青年が如何にここに至ったかという観察に近い。父も既に亡くなってたらしいし。
ただケイレブの怪演はそんな脚色を微塵も匂わせないリアルな肖像として強烈に焼き付く。
ただもちろん彼への同情を誘うような内容じゃないし理解できない部分に回答も共感もない。
『エレファント』やウトヤ島関連の映画と比べても暴力描写をほぼ排しての淡々とした展開が続く。だからこそ余計に終盤の回避できない現実がひたすら重たいし、久々に自分の心臓バクバク聞こえそやったw
