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コンパートメントNo.6のyksijokiのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
4.2
ピントの合わない風景、老婆、古いランプ、靴下。劇中でラウラが撮るビデオカメラの映像はどれも意味はなくみえる。そういうものを愛することの素晴らしさとそういう感受性を忘れちゃいけない。旅情を感じながら2人の関係性を愛おしく思える映画。

リョーハが途中からめちゃ愛おしくなる。その眼差しなのか、うまく言葉にできないところもう含めてめちゃくちゃ愛おしい。前半はラウラが愛おしく感じられるような作りになっていてとても良かった。

若かろうとなんだろうと固定概念で物を捉えたり人のことを判断したりすることはよくあって、そういったアンコンシャスバイアスに苦しめられたりグッと心が抑圧されたりする。ラウラもある種そういうものに苦しめられたり誰かの大切な何かになれていないことへのある種の諦めみたいなものがあった。逆にラウラもリョーハの事を典型的なロシア人男性と決めつけたり、途中で人助けするフィンランド人のことを同郷だからと信用したりする。そういうことでお互いが分かり合えないまま傷口が広がったり、辛い思いをする。

2人がそういったことを少しずつ乗り越えていく様子と、それでも絶対に縮まらない最後の距離というのがあってそこがめちゃ愛くるしかった。別れがわかっているからなのか、境遇が違いすぎるからなのか、惹かれ合うものの一線を超えない2人の選択というのが旅の出会いだからこその選択な気がして何とも胸が締め付けられる思いになった。

ビデオカメラには残らないからこその2人の心の交流は彼らの人生にとって大切な1ページとして刻まれるのだと思う…。めちゃ良作だった。

キャスト★4.3
ストーリー★4.1
プロット★3.9
バイブス★3.8
演出★4.3
音楽★4.3
映像★4.3
全体★4.2



内なる自分を信じるんだよ
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