「心と体と」は年間ベスト級に好きだった映画で、あれも他者との関わり方に関する繊細な作品だったなと。
自分が認知できたり触れる範囲なんてたかが知れていて、ましてコントロールなどできるはずがない。他者への敬意と世界への信頼に基づいた映画。
恋人でも家族でも友人でも他者であることに変わりはなく、分かり合えないがゆえの緊張感が敬意を支え、“他者性”こそが健全な関係性を形成する。
世界はいくつかの変数で理解できるほど単純ではないからこそ未来を予想することに意味はなくて、その場その場できちんとリアクションすることにこそ人柄は宿る。
ポスターとか予告編から受ける印象からすると“愛”に関する高尚な映画っぽいけど、
その実は運命だと思ったのは勘違いで、愛だと思ったのは執着や生活だった話。
割り切って軽やかに世渡りできちゃう人もいるだろうけど、大抵はそうじゃなくて、むしろそれでも足掻き続ける人の方が好きだったりもする。
「あなたがわからない」不安に駆られて言葉を尽くし、フィジカルな繋がりでひと時の安息を得る“誠実な”男の姿が可愛らしくも滑稽で。
3時間弱かけて見せられるとちょっとうんざりしつつ、でもやっぱり説得力でねじ伏せられちゃうなーと。面白かったです。