ベビーパウダー山崎

ベルイマン島にてのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ベルイマン島にて(2021年製作の映画)
2.0
当初はグレタ・ガーウィグとジョン・タトゥーロが演じるはずだったらしく、どちらも監督という端から色を付けた夫婦を、なぜにこれだけ歳の離れた設定にしたのか疑問だったけど、見ているうちにわかってきた。おそらくこれ、自分(ミア・ハンセン=ラヴ)とアサイヤスの話なんだな。
別にベルイマンでなくても良さそうな切り口、小津を追って日本を舞台にした『TOKYO STORY」でも形にはなる感じ。逆にベルイマンの最低な人生(パワハラ・セクハラ、家族無視のイロキチガイ)が二人の関係性をぼやかし、足かせになっている。偉大なる作家を真っ直ぐにRespectできない、時代に逆らえない弱さ。その正しさにはえらく従順で、どうみても不倫でメロドラマを撮りたそうにしているのに、その不道徳さを描くのは「物語(空想)」という言い訳ありき、そこまであえて踏み込まない、カッコつけて、やけに物わかりの良い男女。なんだあの、Amazonの気持ち悪いCMみたいな凡庸なラストカット。
妻は下衆で暗い映画をベルイマンに求めていなそうで、それなのにこんなところまで来て、なんとなく創造して表現者として浸って酔って、傍から見ると、しょうもない「ファッション」としてのベルイマンでしかないと思うが、それを大真面目に表現者の苦悩(表現と人生のバランス)として描いてしまうのが、ミア・ハンセン=ラヴらしいといえばらしい。ゴールデン街の作家バーとかでバイトしてそうな薄っぺらな感覚。好きにやってくれ。U-NEXT399円。