こなつ

かもめ食堂のこなつのレビュー・感想・評価

かもめ食堂(2005年製作の映画)
4.0
久しぶりの鑑賞。いつ観ても温かい気持ちになる作品。全編フィンランドロケというのも素敵だ。

フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督の「過去のない男」その作品で主役を演じたマルック・ペルトラが、この「かもめ食堂」にも出演している。マルック・ペルトラがヘルシンキで育った有名な俳優兼ミュージシャンだと知らずに鑑賞していたので、再確認したいと思った。

ヘルシンキで小さな食堂を始めた日本人の女性サチエ。最初は閑古鳥が鳴いていた食堂だったが、日本のアニメファンのフィンランド青年が姿を見せたり、訳ありの2人の日本人女性と巡り会ったりしているうちに、徐々に色々な人々が集うようになる。

フィンランドって本当にゆったりとしている。路面電車が静かに街を横切り、港では大きなカモメがのどかに舞っている。市場の色鮮やかな野菜や果物、大声で叫ぶ売り子の声も聞こえない。そんな街にお店を構えたサチエもまた、お客が入らなくて潰れるかもしれないのに、全然焦らないし、なるようになると構えている。アキ・カウリスマキの作品に出てくる人達とどこか被るところもあって興味深い。フィンランドの何が人をこんなに落ち着かせるのか、、
サチエは非常にマイペースで、フィンランドの人が受け入れるかどうかわからない、日本の「おにぎり」をメインにしたり、特に宣伝も考えず、ひたすらじっくり待っている。そうする事で自然と幸運が近づいて来るような心地良さが、作品全体に流れていてほっこりする。彼女もフィンランドのイメージにピッタリの女性なのだ。
サチエの様に、自分らしく人生にチャレンジ出来ることはどれ程貴重なことかということも、作品を通して羨ましい思いで見つめた。

マルック・ペルトラは、サチエの食堂の前のお店の持ち主として現れるが、役柄のせいか「過去のない男」の時より若々しく、動きも軽やかに見えた。しかし、「かもめの食堂」の撮影の2年後、彼は病気のため亡くなっている。まだ若いのにとても残念だ。
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